幼児教育

【絵本の読み聞かせテクニック】理解度がアップするコツ・読み方!

絵本の読み聞かせをおこなうとき、どんな読み方をすればいいのか。

実は、現在に至るまでの研究から、絵本の読み聞かせをするときに、質問したり、指差しをしたりすることで、子どもの物語の理解度が高まることがわかっています。

そこで、今回は、国内外の研究論文や米国小児科学会の情報をもとに、絵本の読み聞かせで使える効果的なテクニックについて、わかりやすく解説していきます。

読み聞かせで使える4つのテクニック

国内外のさまざまな研究を踏まえた上で、みなさんが読み聞かせをするときにやってほしいテクニックは次の4つです。

①絵本の内容について質問する

②指を指したりしてで子どもの注意をひく

③ゆっくり読みすぎない

④読み聞かせの後に感想を聞く

では、それぞれのポイントについて、国内外の研究を踏まえて、もう少し詳しく見ていきましょう。

①絵本の内容について質問する

読み聞かせの途中で、子どもに質問することで子どもの物語の理解度が高まることがわかっています。

今井らが90人の幼稚園児を対象におこなった研究によれば、読み聞かせの途中で、登場人物の気持ちに関する質問をすることで、物語全体の理解度が高まることがわかりました(今井ら 1999)。

そのため、物語を読んでいる途中は、「◯◯くんは、どういう気持ちだと思う?」「どうして◯◯ちゃんは泣いちゃったのかな?」など、登場人物やキャラクターの気持ちを問うような質問をすることが大切です。

ですので、物語を呼んでいる途中で、登場する人やキャラクターの気持ちや次の展開を予測する質問をしてあげるようにしましょう。

②指を指したりしてで子どもの注意をひく

絵本を読み聞かせしているときに、読み手が絵本の文章や絵に描写されている登場人物(キャラクター)や事物(アイテム)、表現を指差すなどして、子どもの視線を誘導してあげることで、物語の理解度が高まることもわかっています(中村 1993)。

たとえば、主人公の女の子がお母さんにおつかいを頼まれる場面があったら、その場面の文章を読みあげてから、絵を指差して「◯◯ちゃんは、おつかいを頼まれたね。ママは忙しそうだね~。」と声をかけてあげるイメージです。

このように、描かれている絵を指差しながら、その絵や状況について説明してあげることは、子どもの理解度を高める効果的なテクニックのひとつです。

③ゆっくり読みすぎない

絵本を読むときに、子どもが理解しやすいよう、あえてゆっくり読み聞かせをしている方も少なくないと思います。

ただ、幼児に絵本の読み聞かせをするときは、ゆっくり読みすぎると、子どもの注意が散漫になってしまって、集中してくれない可能性があります。

それを示す一つの研究をご紹介します。

玉瀬は、現役の保育者が「可能な限りゆっくり読み聞かせした録音テープ」「速く読み聞かせした録音テープ(※)」の2つ用意しました。

※分速300字程度(1分間に300文字程度の速さ)。アナウンサーが話すスピードに近いです。

そして、40人程度お年長の園児を2つのグループに分けて、Aグループにはゆっくりの録音を、Bグループに速いスピードの録音テープを聞かせました。

その結果、速く呼んだ録音テープを聞いたBグループの子どものほうが、絵本を読んでいる途中、絵本から目線を外す回数が少なかったことがわかりました(玉瀬 2008)。

つまり、ゆっくり読むことは、子どもに良い影響を及ぼすとは限らず、幼児の絵本への注意が散漫になる恐れがあるということです。

そのため、絵本の読み聞かせをするとき、はっきりとした発音で呼んだり、質問したりすることは大切ですが、変にゆっくり読んであげる必要はないので、その点は注意をしましょう。

④読み聞かせの後に感想を聞く

読み聞かせのあとに、子どもにその絵本の感想を聞いてあげることで、物語の理解度が高まることもわかっています(松村 2014)。

これは、読み聞かせの後に、感想を聞くことで、子どもが登場人物の心情を思い起こすのを促した結果であるとされています。

また、特に、物語の終わりに感想を聞くことで、物語に出てくる登場人物の気持ちへの理解や共感が深まることもわかりました。

そのため、人の気持ちや共感、思いやりの力を育むためにも、絵本の読み聞かせが終わった後に、物語の感想を聞くことは重要といえます。

米国小児科学が推奨する読み聞かせテクニック

米国小児科学会が推奨する読み聞かせは次の通りです。

1.親子でいっしょに文章を音読する

2.読んでいる文章の下を指で走らせる

3.キャラクターや登場人物によって声のトーンや大きさを工夫する

4.絵にあるキャラクターや物の名前を答えさせる

5.物語の出来事を日常生活での出来事と関連付ける

6.読み聞かせの途中で、子どもが質問してきたら丁寧に答えてあげる

7.読んでいる途中で登場人物の気持ちや次の展開について質問する

8.登場人物・キャラクターの気持ちについて話し合う

【参考】

The American Academy of Pediatrics.”Why It Is Never Too Early to Start Reading With Your Baby””Why It Is Never Too Early to Start Reading With Your Baby”

The American Academy of Pediatrics.”Helping Your Child Learn To Read”

さいごに

今回は、絵本の読み聞かせするときに効果的なテクニックについて解説してきました。

ただ、絵本を読むだけでもたしかに効果は期待できますが、せっかく読んであげるなら、親子ともに楽しめるほうが良いですよね!

そのため、ぜひ今回解説したテクニックを取り入れて、有意義な読み聞かせをしてあげてくださいね!

今井靖親, 森田健宏, 杉山美加 (1999) 幼児の物語理解に及ぼす挿入質問の効果-絵本の読み聞かせに関する心理学的研究-. 桜花学園大学研究紀要, 1:19-35

The American Academy of Pediatrics.”Why It Is Never Too Early to Start Reading With Your Baby””Why It Is Never Too Early to Start Reading With Your Baby”

中村 年江・今井 靖親(1993)絵本の読み聞かせに関する心理学的研究(IV)
一幼児の物語理解に及ぼす視点と絵本提示の効果一,日本教育心理学会
総会発表論文集35:292

玉瀬 友美(2008)幼児における絵本への情緒的反応に及ぼす読み聞かせ 速度の効果,読書科学 51(2):58-65

松村 敦・根岸 舞・宇陀 則彦(2014)絵本の読み聞かせ後の問いかけが
子どもの物語理解とイメージ形成に与える影響,日本教育工学会論文誌
38:157−160