幼児教育

【絵本の読み聞かせの途中で質問すべき?】質問の効果を解説!

「絵本の読み聞かせの途中で質問してもいいの?」

絵本を読み聞かせしている途中に質問すると、

「子どもの集中力が切れる」

「子どもが絵本の世界に入り込みづらくなる」

などと言われていますよね。

ただ、それは経験によるところが多く、実際に実験を通して検証されたことかどうかというとそうではありません…。

また、実は、読み聞かせの途中で質問することで、子どもにプラスの影響をもたらすこともわかっています。

米国小児科学会でも、読み聞かせの途中で質問することを推奨しています。)

そこで、今回は絵本の読み聞かせにおける「質問」の効果について、国内外の研究を踏まえてわかりやすく解説していきます。

「質問」は子どもの理解度をアップさせる!

現在に至るまでの研究で、読み聞かせの途中で、子どもに質問することで物語の理解度が高まることがわかっています。

今井らが90人の幼稚園児を対象におこなった研究によれば、読み聞かせの途中で、登場人物の気持ちに関しての質問された子どもたちは、まったく質問されたなかった子どもたちに比べて、物語全体の理解度が高かったことがわかりました(今井ら 1999)。

さらに、別の研究では、読み聞かせのあとに、子どもにその絵本の感想を聞いてあげることで、物語の理解度が高まることもわかっています(松村 2014)。

これは、読み聞かせの後に、感想を聞くことで、子どもが登場人物の心情を思い起こすのを促した結果であるとされています。

たしかに、小学校のテストのように、毎回毎回質問したり、難しすぎる問題を出したら、子どもは純粋に絵本を楽しむことができないかもしれません。

でも、質問の仕方や内容を工夫して、いっしょに話し合えるような問いかけをしてあげると、子どもの物語の理解度は高まると言えます。

そうすることで、より有意義な絵本の読み聞かせをすることができます。

読み聞かせで効果的な質問テクニック!

読み聞かせにおいて、質問は子どもの物語の理解度を高めるために大切なテクニックのひとつであることはお伝えしました。

ただ、質問の仕方を間違えてしまうと、子どもの理解を助けるどころか、絵本嫌いになってしまうことも…。

そこで、みなさんにおすすめしたい絵本の読み聞かせにおける質問テクニックは次の6つです。

①登場人物の気持ちについての質問

②物語中の出来事に関しての質問

③次の展開についての質問(予測)

④語彙の確認

⑤物語を読み終えた感想

⑥登場人物や物語に関するクイズ

では、それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

①登場人物の気持ちについての質問

まず、一番やっていただきたいことは、登場人物やキャラクターの気持ちについて質問することです。

たとえば、登場人物が泣いたり、怒ったりしている描写があれば、「◯◯は今どんな気持ちかな?」「どうして怒っているのかな?」といったふうに、その登場人物の気持ち・心情を聞く質問を投げかけてみましょう。

また、絵本における質問は基本的に答えがありません。

そのため、「質問」という形を取りながらも、親子でいっしょに話し合いながら考えてみることも大切です。

また、例えばお友達と喧嘩する描写があれば、「◯◯くんも保育園でお友達と喧嘩したことがある?」というふうに子どもの日常生活に関連付けるのもひとつのテクニックです。

そして、もし子どもが「うん、ある」と言ってきたら、「そのときどんな気持ちになった?」と聞いてみるようにしましょう。

そうすることで、子どもは、登場人物の気持ちに深く共感して、理解も深まります。

②物語中の出来事に関しての質問

次におすすめなのが、物語中におきた出来事について、質問することです。

実は、登場人物の気持ちに関する質問より、物語中の出来事(どんなことが起こったか)に関する質問のほうが、子どもは答えやすいこともわかっています(今井ら 1999)。

そのため、登場人物の気持ちを聞いて、うまく答えられない場合は、読み聞かせの途中で「さっき、どんなことが起きたっけ?」とか「◯◯くんは、何を忘れちゃったんだっけ?」というふうに、過去の大きな出来事について質問してあげるのもおすすめです。

そうすることで、子どもは物語の流れをこまめに思い出しながら、読み進めることができるので、理解を高めるのに役立つ可能性があります。

③次の展開についての質問(予測)

よくあるテクニックのひとつが「次の展開を予測させる質問」です。

読み聞かせをしている途中に、流れに沿って、「次、◯◯はどうなっちゃうと思う?」「◯◯ちゃんは次に何をすると思う?」といった感じで次のシーンを予測させることです。

そうすることで、子どもが物語の流れから「推測する力」を養ったり、次の展開がどうなるかが気になって読み聞かせに集中するようになったりすることが期待できます。

ただ、一部の研究では、先を予測させる質問は、物語の記憶が悪くなる可能性があることも指摘されています(高木 1976)。

そのため、次の展開を予測させる質問を1冊の絵本の中で何回もおこなうことは推奨しませんが、「3びきのこぶた」など、一定のパターンがあり、次の展開を予測しやすいものに関しては、このような質問を活用するのもひとつのテクニックだと思います。

そのため、絵本の内容や話の流れに応じて次の展開を予測する質問を、子どもといっしょに楽しみながら織り交ぜてみるのも個人的にはおすすめです。

④語彙の確認

絵本を読んでいると、ときどき難しい表現や語彙が出てきます。

それに関しては、ただ読んであげるだけでなく、子どもにその言葉の意味を知っているか質問して、もし意味を理解していなければ、簡単な言葉で言い換えて説明してあげるのもおすすめです。

ひとつ、ぼくの実例をあげます。

5歳のお子さんに絵本を読んでいた時、「あやす」という表現が出てきました。

そこで、その子どもに「あやすってどういう意味がわかるかな?」というふうに聞いたところ「わからない」と答えてきました。

そのとき、ぼくは「あやすっていうのは、泣いている赤ちゃんをなでなでしたり、だっこしたりして、泣き止ませてニコッとさせてあげることだよ」と伝えました。

すると、その子どもは「ぼく、保育園で赤ちゃんの背中をなでて、泣き止ませたことあるよ」と教えてくれました。

このように、知らない言葉がでてきたら、わかりやすい言葉に言い換えて説明してあげることで、子どもの過去の経験とリンクして、理解が深まるタイミングがあります。

そのため、ぜんぶの言葉を説明するのは大変ですが、むずかしい表現がでてきたら、そのうちのいくつかは説明してあげてみてくださいね!

⑤物語を読み終えた感想

先程も解説しましたが、読み聞かせの後にに、子どもにその絵本の感想を聞いてあげることで、物語の理解度が高まることもわかっています(松村 2014)。

これは、読み聞かせの後に、感想を聞くことで子どもが登場人物の心情を思い起こすのを促した結果であるとされています。

そのため、読み終えた後に感想を聞いてあげることも大切です。

ただ、このとき、やりがちなのが、「どういう話だったか簡単に話してみて?」など、いきなり「要約」を求めることです。

要約は、トレーニングすればできる子もいますが、いきなりやっても子どもにとってはむずかしいですし、無理に強要すると、絵本の読み聞かせ自体をキライになることも…。

そのため、あくまで子どもに聞くのは「感想」であって、「要約」をいきなり求めるのはやめましょう。

また、感想を聞くときも「どうだった?」と聞くと答えるのがむずかしいので、「どのページが一番面白かった?」とか「◯◯ちゃんは、どんなところが偉かった?」など、答えやすいように具体的な質問をしてあげることも大切です。

⑥登場人物や物語に関するクイズ

さいごは経験論になってしまいますが、読み終えた後に、クイズゲームをするのも親子で楽しめるのでおすすめです。

たとえば、

・登場人物の洋服の色

・どんな登場人物がいたか

・◯◯が拾ったものはなんだったか

というふうに、物語に出てきた登場人物やその他のものに関して、簡単なクイズゲームをやるというものです。

もちろん、クイズゲームなので、答えられなくても叱る必要はまったくありません。

あくまで、読み終えた後のゲームとしてやってみるようにしましょう!

絵本の第一目的は「空想世界の物語を楽しむこと」

ここまで、絵本における質問の効果について解説してきました。

ただ、ここでみなさんに覚えておいていただきたいことがあります。

それは、

「絵本の第一目的は空想世界の物語を楽しむということ」

です。

ついつい質問することばかりに気を取られると、いつの間にかお勉強や暗記テストみたいな読み聞かせになってしまいます。

そのため、読み聞かせの第一目的は、親子で空想世界の物語を楽しむことであるということを忘れないようにしてくださいね!

さいごに

今回は、絵本の読み聞かせにおける質問の効果や具体的なテクニックについて国内外の研究を踏まえて解説してきました。

よく、ネットなどで検索すると、質問は良くないという情報が出てきますが、そんなことはありません。

むしろ、上手に活用することで、子どもの理解度を高めることができます。

そのため、ぜひ今回解説したテクニックを活用してみてくださいね!

今井靖親, 森田健宏, 杉山美加 (1999) 幼児の物語理解に及ぼす挿入質問の効果-絵本の読み聞かせに関する心理学的研究-. 桜花学園大学研究紀要, 1:19-35

松村 敦・根岸 舞・宇陀 則彦(2014)絵本の読み聞かせ後の問いかけが
子どもの物語理解とイメージ形成に与える影響,日本教育工学会論文誌
38:157−160

高木和子 ,小林幸子 ,田代康子 ,伊藤みね ,佐 藤和子(1976)物語受容過程の分析 (2): 物語絵本の読みきか中の質問の効果 .日本教育心理学会総会発表論 集.(18): 94−95