「幼児教育って大切なの?」
「幼児教育でどんな力を育てればいいの?」
幼児教育、近年、とても注目を集めていますよね。
英語の早期教育を始め、右脳教育や小学校受験など、さまざまな幼児教室がありますよね。
また、そのなかで「フラッシュカード」など、某大手幼児教室がおこなっている代表的なメニューなども見聞きしたことがあります。
ですが、
「この幼児教育、本当に重要なの?」
疑問に思うお母さんお父さんも多くいらっしゃると思います。
(特に子どもの英語教室や幼児教室は授業料が高いですからね…)
ただ、結論からお伝えすると、たしかに幼児教育は大切です。
幼児教育の重要性に関する研究論文や調査はいくつかありますが、そのなかには、幼児期の関わり方や教育は子どもの将来の就業状態や年収、犯罪率などにも影響を与えることがわかっています。
また、幼児教育と聞くと「IQや学習能力を高める”知育”」をイメージすると思いますが、そんなに単純な話でなく、本質はもっと深くにあります。
そこで、今回は幼児教育の重要性は、その時期に養うべき力などについて、現在に至るまでの国内外の研究論文などをふまえて、わかりやすく解説していきます。
そのため、幼児教育の必要性やポイントについて知りたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
目次
【幼児教育はどうして必要なの?】
幼児教育への投資が子どもに最も効果的!
まず、幼児教育がどうして大切なのか、その重要性と必要性について解説していきます。
幼児教育が大切な理由は大きくわけて以下の2つになります。
①投資の”収益率”が最も高い
(最もコスパが費用対効果が良い)
②脳が変化しやすい
(脳の可塑性との関係)
少し、見栄えを良くするために、専門用語も交えています。
とはいっても、これだけだとわかりづらいですよね、すみません…。
そこで以下では、それぞれの理由について、もう少し詳しく解説していきます。
①投資の”収益率”が最も良い
まず、幼児教育が重要な理由の一つに、「投資による”収益率”が最も高い(*)」というのがあります。
「投資?」
「収益率?」
子どもの教育に「投資」や「収益率」など、金融分野で使われそうな専門用語を用いてすみません。
(ぼくも抵抗があります…。)
ただ、実際、教育経済学の分野ではよく使われている用語ですので、ぜひ、頭の片隅に置いていただけると今後役に立つかもしれません。
ここでの「投資」とは、塾や教室に通わせる費用や教材費、その他、子どもに教育に関わる費用を意味します。
また、“教育の収益率““は、
「1年追加的に教育を受けたことによって、子どもの将来の収入がどれくらい高くなるか」
を示したものになります。
これを踏まえた上で
「幼児期=投資による”収益率”が最も高い」という意味を解説すると、
「幼児期=教育投資をすることで、得られる恩恵が最も大きい時期」
ということになります。
もっと噛み砕くと、お子さんが、
小学生になったとき、
中学生になったとき、
高校生になったとき、
に塾費用や教材費を投資するよりも、
小学校入学前(就学前)の時期、つまり、幼児期に投資をしたほうが、子どもにより大きなプラスの影響をもたらすことができるということです。
また、「教育投資」は、なにもお金のことだけではありません。
そのときに子どもに与えられる環境も含まれます。
通う保育園や幼稚園、家庭内の環境、周りの大人の質や関わり方などなど…
そのお子さんが触れるすべても大きな投資の一種として考えてください。
そうした充実した教育投資をすることで、最もその効果が得られるが幼児期だということです。
そういった意味から、幼児期の教育や子どもとの関わり方はとても重要なのです。
②脳が変化しやすい
2つ目は、「脳の変化のしやすさ」と関係があります。
これはあくまでも個人的な意見ですが、
「教育=脳の刺激」
です。
たとえば、問題を解いたりするのには脳を使うことはイメージしやすいと思います。
ですが、脳はすべてに関わっています。
たとえば、「コミュニケーション」や「我慢する力」、「感情」など、これらは「心」と結び付けられることが多いですが、実際は脳と密接に結びついています。
そして、脳は一生をかけて変化し続けると言われています。
ですが、やはり「変化のしやすさ」はあります。
人間にとって、一番脳が変化しやすい日は、あなたにとっての「今日」です。
つまり、若ければ若いほど、さまざまな刺激や体験をすることで、脳は変化し、適応していきます。
そのため、幼児期という早い時期に貴重な経験をさせてあげることで、脳にさまざまな刺激を与え、今後の成長の土台を作ることができます。
また、脳には「臨界期」と言われるものもあります。
臨界期は、
「ある特定の能力やスキルを最も身に付けやすい時期」
のことです。
そして、この臨界期は0~9歳あたりに多くあります。
そういった意味でも幼児期の教育はとても重要です。
【幼児教育で育てるべき力は?】
IQ・学習能力よりも大切な非認知能力
幼児教育と聞くと、IQや学習能力を高める知育、あとは英語の早期教育などをイメージする方が多いと思います。
が、実はそんなことありません。
むしろ、幼児期に育むのは、試験の得点やIQなどとはちがって、数値化できない、つまり、目に見えない「内側の力」なんです。
たとえば、意欲や好奇心、忍耐力、自制心などなど。
これをまとめて「非認知能力」といいます。
「あ、聞いたことある!」
と思ったお母さんお父さんも少なくないと思います。
この非認知能力の重要性を示す研究の一つに、「ペリー幼稚園プログラム(*)」があります。
このプログラムは、シカゴ大のジェームズ・ヘックマン教授らによる研究で、一時期大きな話題にも登りました。
そこで、非認知能力の重要性を実感していただくために、以下では、「ペリー幼稚園プログラム」について、簡単にご紹介します。
ペリー幼稚園プログラムの概要と結果
「ペリー幼稚園プログラム」は、1960年代から開始された実験です。
(40年以上の追跡調査ってすごく大規模ですよね…)
この実験で対象になったのは、アフリカ系米国人の3~4歳の子どもたちでした。
そして、この子どもたちやその家庭に対して、以下の就学前プログラムが施されました。
①幼稚園の先生は修士号(大学院卒)以上の学位を持つ児童心理学等の専門家に限定。
②子ども6人を先生一人が担当するという少人数制
③午前中に約2・5時間の読み書きや歌などのレッスンを週に5日、2年連続受講。
④1週間につき、1・5時間の家庭訪問
上記のようなとても手厚いサポートをされました。
また、これに加えて、親御さんに対しても子育てのアドバイスや注意点などをおこうことで、“親御さんが学べる機会”を積極的増やしました。
そして、このペリー幼稚園プログラムを受けた子どもと、残念ながら受けることができなかった子どもとの間で比較がおこなわれました。
その結果、このペリー幼稚園プログラムを受けた子どもには以下のような特徴が見られました。
●6歳時点でのIQが高い
●19歳時点での高校卒業率が高い
●27歳時点での持ち家率が高い
●40歳時点での所得が高い
●40歳時点での逮捕率が低い
つまり、ペリー幼稚園プログラムによる幼児期の介入は、その子どもの学歴や雇用、経済状態などに継続的に影響を及ぼすことがわかったのです。
また、ヘックマンは、こうしたプログラムが社会にもたらす「社会収益率」に対しても推計し、その数値は7~10%に上ると指摘しました。
社会収益率は7~10%に上るということは、4歳のときに投資した100円が、65歳のときに6,000円から3万円ほどになって社会に還元されているいうことになります。(*)
そして、この研究は、先程ご紹介した「非認知能力」の重要性を示す一つのきっかけになりました。
非認知能力の重要性
先ほどご紹介したペリー幼稚園プログラムでは、子どものIQだけでなく、将来の年収や雇用、逮捕率など、さまざまな面に影響を与えることがわかりました。
ですが、もう一つ興味深い結果が得られました。
それは何かというと、「子どもの学力やIQ」です。
ペリー幼稚園プログラムによって、たしかに子どもたちの小学校入学後のIQや学力テストの成績が上昇したことがわかりました。
でも、その後も観察を続けると、
ペリー幼稚園プログラムを受けた子どもとそうでない子どものIQの差は、小学校入学(6歳)とともに小さくなり、ついに、8歳前後で差がなくなったのです…。
(衝撃、ですよね。あれだけ手厚いサポートを受けても、IQの差が縮まるなんて…)
ちなみに、IQなど数値化できるもの、つまり、目に見える力を「認知能力」といいます。
(自制心や非認知能力は、目に見えない、つまり認知できないから「非」認知能力と言うんですね。)
この結果を受けて、ヘックマン教授は、子どもの将来に大きな影響を与えるのは「IQ」だけではなくて、忍耐力や自制心、好奇心などの「非認知能力」で、ペリー幼稚園プログラムでは、その部分が育てられたと結論付けました。
でも、たしかにそうですよね。
なぜなら、IQの差は小学生でほぼゼロになっているので…。
単なるIQや学力を鍛えても、それが子どもに本当に効果的な影響をもたらすとは言えません…。
ですので、幼児期は、この「非認知能力」を意識して、養うことが大切だと言えるのです。
【非認知能力ってどうやって育てるの?】
主な非認知能力とそのポイント
非認知能力の重要性について、実感していただけたところで、ここでは
非認知能力にはどんなものがあるのか、
そして、
その具体的な育て方
などについて、わかっている範囲でお伝えしていきます。
ただ、「ここからここまでが非認知能力」という基準はとても難しくて、今の段階では明確な基準がありません。
(専門家の間でも意見がわれるといった状況です…)
ですので、基本的には、テストの点数やIQ、偏差値など、いわゆる「学力に関する数値(スコア)」以外だとここでは思っていただいて大丈夫です。
また、非認知能力といっても、さまざまな能力があるので、以下では主なものをご紹介します。
ぜひ、覚えておいていただきたい非認知能力は以下の8つです。
●自己肯定感 / 自信
●自制心
●社会適応力
(コミュニケーション能力・協調性など)
●やり抜く力(粘り強さ・忍耐力)
●回復力(レジリエンス)
●創造性
●その他、性格的なもの
(好奇心、誠実性など)
では、それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
自己肯定感 / 自信
まず、自己肯定感や自分への自信です。
具体的には、
「僕ならできる!」
「僕はもっとがんばれる!」
など、ポジティブな感情を持てるようになることです。
自己肯定感や自分への自信を持てることで、新しいことにチャレンジできるようになりますし、生きることの楽しさや意義も実感できるようになります。
そのため、幼い頃から”小さな成功体験”を積み重ねることで、お子さんの自己肯定感や自信などを高めることができます。
自制心
自制心は近年注目されている力のひとつで「セルフコントロール」とも言われます。
自制心とは、
「目の前の欲求を先延ばしにする力」
なんて言われたりもします。
また、自制心は、ストレスに対応する能力、つまり、自分の感情をコントロールする力とも関係しています。
この自制心をしっかりと身につけることで、思い通りいかなくても上手に乗り越えたり、将来の目標に向けて計画的に行動することができます。
ちなみに、この自制心は、脳の「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という部分が大きな役割を担っています。
ですので、その脳の部位をしっかりと鍛えることも大切です。
また、子どもの癇癪やキレやすさにも自制心は大きく関係しています。
ちなみに、子どもの癇癪やキレやすさを改善する具体的な方法や対策に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてくださいね!
社会適応力
社会適応力は、お子さんが将来社会で活躍していくときに必要な力です。
わかりやすいもので言うと、「リーダーシップ」や「コミュニケーション能力」などが含まれます。
こういった能力は、子どもの頃の学校や習い事での経験、友人や周りの大人との人間関係などによって身につけることができます。
具体的な習い事で言うと、演劇などもありますね。
ですので、自分の意見を伝えたり、相手の気持ちを思いやったりする力を意識して身に付けさせていくことが大切です。
やり抜く力(粘り強さ・忍耐力)
やり抜く力は、「グリット」と呼ばれるもので、忍耐力や粘り強さなどとも言われます。
また、グリットは、各分野で活躍する一流の人には共通してみられる特性の一つでもあります。
このグリットに関しては、具体的な身に付け方や教育方法などについては、まだ十分に研究がなされていません。
でも、なにか一つに打ち込む経験であったり、努力をして成功体験を積むことで身につけられると考えられます。
この「グリット」に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はぜhチェックしてみてくださいね!
回復力(レジリエンス)
レジリエンスとは、自分にとってショックな出来事や暴力、災害などが起きたとき、それを自分の成長の糧として受け入れ、そこから回復する心の弾力性のことを言います。
この不透明な時代の中、お子さんも困難な出来事に遭遇して、思い悩むことが増えます。
また、学校でのいじめや人間関係のトラブルなどに巻き込まれる可能性も…。
そのようなときに、心が折れてしまうのではなく、それを糧に成長する「回復力」がレジリエンスです。
このレジリエンスですが、近年の研究で、演劇を通じて身につくことがわかってきています。
レジリエンスと演劇についての関係は以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてくださいね!
創造性
創造性は、新しいものを作ったり、独自な発想をする能力のことを指します。
これについてはさまざまな研究が行われていますが、いまだにその本態について明快な結論は得られていません。
ですが、たくさんの自然に触れさせたり、少し散らかったお部屋で遊ばせたり、限られたおもちゃだけを与えて工夫をして遊ばせたりすることで、創造性の土台を築くことはできます。
そのため、日常生活のなかでちょっとした工夫をしてあげるようにしましょう。
その他、性格的なもの
非認知能力には他にもさまざまなものがあります。
たとえば、好奇心や外向性、協調性、誠実性など…。
こういったものは一長一短です。
また、
「非認知能力=絶対的に良い」
というわけではありません。
たとえば、好奇心がある子どもは、じっとしていられなかったり、飽きっぽかったりすることがあります。
なので、悪く言えば、「落ち着きがない子ども」と言えます。
ですが、その一方で、新しいものに触れるのを恐れなかったり、自分の興味のある分野であればとことん突き詰められる力もあります。
ですので、この性格の特性に関しては、良い面悪い面のどちらもあります。
それを踏まえた上で、子どもの適性を見極め、伸ばしていくことが大切です。
【さいごに】
非認知能力と認知能力の両方が大切!
今回は、幼児教育の重要性についてご紹介してきました。
また、そのなかで特に非認知能力の大切さについて今回は触れてきました。
ですが、
だからといって、IQなど知育がいらないわけではありません。
また、これらは別々に身につけるべきではなくて、絡み合うことで、より効果的にアップしていきます。
そのため、非認知能力だけでなく、認知能力も身につける必要があることはしっかりとご理解いただけると幸いです…!
ただ、幼児期では、知育だけでなく、非認知能力を鍛えられる経験や刺激を与えることを大切にしましょう!