「絵本ってどれくらい読んであげたらいいの?」
「1日何冊の本を読んであげたらいいの?」
よく、保護者の方々から寄せられるご質問のひとつに「絵本の頻度」があります。
絵本の読み聞かせは、乳幼児期のお子さんにやってあげたほうがよいことのひとつです。
ただ、1日どれくらいの本を読んであげたほうがいいのか、何冊読んであげたらいいのか、気になってしまいますよね。
そこで今回は、国内外の研究論文を踏まえて、絵本の読み聞かせの頻度についてわかりやすく解説していきます。
目次
最低1日1冊がひとつの目安!余裕があれば2~3冊!
絵本を読む頻度のひとつの目安は、ズバリ、「1日1冊」です。
それを示す研究をひとつご紹介します。
山木氏らは、小学1年生31人をAグループ(16人)とBグループ(15人)に分けて、『赤い風船』という文のない絵本を事前に見せて、その後、自由に作話させるというテストをおこないました。
Aグループの子どもたちは幼稚園で1年間、特に読み聞かせに力を入れて保育されてきた園児たちでした、
具体的には、担当の先生が1年間、季節や行事なども考えあわせて絵本を選び、少なくとも1日1冊は絵本の読み聞かせを行ないました、
一方でBグループの子どもたちは、普通に保育された園児たちでした。
※もちろん、Bグループの子どもたちのなかにも、普段の幼稚園での生活やご家庭で絵本を読んでもらっている子どもが含まれていますが、それを示す客観的な証拠はありません。
そして、Aグループ、Bグループの作話テストの結果を比較しました。
その結果、毎日積極的、かつ、計画的に読み聞かせをしたAグループの子どもたちのほうが、優れた想像力や表現力を発揮したことがわかりました。
そのため、絵本の頻度に関しては、1日最低でも1冊、また、絵本選びにおいても、季節や行事などを考えることが子どもの想像力や表現力を育むためにも重要といえます。
ただ、これは最低ラインです。
そのため、もし、お時間に余裕があれば、1日2冊~3冊読んであげても全然問題ありません。
ただ、無理にたくさん読むと、絵本嫌いになる可能性があるので、1日何冊も読んであげる必要はありません。
あくまで、お子さんの興味や集中力が続く範囲で読んであげるようにしましょう。
また、大切なのは、1日何冊も読んであげることではなく、1日1冊でも、それを習慣にすることです。
そのため、細く長く続けていくことを意識するのも大切です。
絵本を選ぶときの3つのコツ
毎日1冊ずつ読むとなると、絵本選びが大変ですよね。
ただ、せっかく読んであげるなら、有意義な時間にしたいとも思う方も少なくないと思います。
そのような方のために、ご紹介したい絵本選びのコツは次の3つです。
①季節や行事に合わせた内容を選ぶ
②色彩豊かな絵が絵が描かれている本を選ぶ
③いろいろなジャンルの本を選ぶ
では、それぞれのポイントについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
①季節や行事に合わせた内容を選ぶ
まず、季節や行事に合わせた本を選んであげることが大切です。
たとえば、日本には四季があります。
そのため、「春」であれば、
・桜など春の特徴が描かれている絵本
・入園など春の行事に関わる内容の絵本
などを読んであげることが大切です。
日本には、四季だけでなく、七夕やひなまつり、節分など季節ごとにさまざまな行事があります。
それを楽しく学ぶためにも、季節や行事に合わせた本選びが大切になります。
②色彩豊かな絵が絵が描かれている本を選ぶ
絵本を選ぶときには、色彩豊かな絵が描かれている絵本を選ぶことも大切です。
また、子どもの興味を引きたいのであれば、絵が浮き出てくる仕掛けがある絵本を選ぶのもおすすめです。
現在に至るまでの研究から、絵本の読み聞かせを通して、絵と言葉によって表現された世界に触れることで、現実の世界を超えたイメージの世界を楽しめるようになるとされています(本田 1980)。
また、絵本から、創造力やきれいなもの・美しいものを発見する感動、ファンタジーの世界で遊ぶことの楽しさ、さまざまな人の感情を学ぶことができるともされています。(佐々木 1975)
そのため、なるべく色彩豊かな絵が描かれた絵本を選んであげるようにしましょう。
③いろいろなジャンルの本を選ぶ
絵本を選ぶときは、ひとつのジャンルだけでなく、さまざまな内容の絵本を選ぶことも大切です。
というのも、現在に至るまでの研究から、絵本の読み聞かせを通して、その内容に応じた学習ができることもわかっています。
とある研究では、15ヶ月~18ヶ月の乳幼児の子どもは、絵本で見聞きしたものであれば、現実世界で実物を見たとき、同じものとして認知できることがわかっています(Ganea, Pickard, & DeLoache, 2008)。
つまり、絵で見たものを実物に変換できるということです。
(たとえば、絵本で「りんご」の絵を見た後、現実世界で実物のりんごを見たら、同じものとして認知できるということです。また、絵本におけるイラストが、より実物に近いほうが、認知できる可能性も高まります。)
また別の研究では、3歳~4歳の子どもに、カエルとトカゲがどのようにして、鳥から食べられないように身を守っているかについて説明した絵本を読み聞かせしました。
※自分の体をカモフラージュすることで、鳥から身を守ることができるという内容。
その後、カモフラージュした生物とそうでない生物の2枚の絵をみせて、どちらが鳥に食べらる可能性が高いかを子どもたちに質問したところ、カモフラージュしていない生物のほうが食べられる可能性が高いことを推測できました。
※カモフラージュ
このように、子どもたちは幼くても絵本の読み聞かせをしてもらうことで、その絵本の内容に応じた知識を得ることができるのです。
そういった意味でも、ストーリー性のあるものだけでなくて、たまには生き物に関してだったり、乗り物に関してだったり、多種多様なジャンルの絵本を読んであげることが大切です。
選択肢を出して、選ばせるのが大切!
最終的に読み聞かせする絵本を決定するときには、お子さんに選ばせることが大切です。
親御さん目線で絵本を選んで、決定してしまうと、子どもが読み聞かせを嫌がることも少なくありません。
ただ、子どもに絵本を選ばせるときに、
「好きな本を持ってきて!」
というだけだと、うまくいきません。
そのため、あらかじめ、お母さんが絵本を3冊程度用意して、それを並べて、「どれがいいか選んでみて!」というふうに声掛けしましょう。
そうすることで、お子さんは自分で選んだという実感をもって、より読み聞かせに集中してくれるようになりやすいです。
絵本は市区町村の図書館で借りるのがオススメ!
絵本を毎日1冊以上読むとなると、「絵本の準備」が大切ですよね。
そのときに、ぜひ活用していただきたいのが、市区町村にある図書館です。
絵本1冊の金額も馬鹿になりませんので、すべて購入すると莫大な費用になりますし、置き場所にも困ってしまいますよね。
そのため、最初は図書館で絵本を借りて、それを読んであげることをオススメします。
そして、そのなかで、繰り返し読み聞かせをお願いしてきたり、お子さんが特に気に入った絵本があれば、購入していあげるようにしましょう。
図書館は登録さえすれば、無料で使えるので、ぜひご利用してみてくださいね!
絵本の記録用ノートを作るのもオススメ!
せっかく毎日絵本を読むのであれば、読み聞かせした絵本を記録するノートを作るのもオススメです。
そうすることで、子どもが今まで読んできた本をリストにして視覚化することができるので、達成感や満足感を得るのに役立ちます。
記録用ノートには、
・読み聞かせした日付
・絵本のタイトル
を最低でも記入すればOKです。
また、もしお母さんに余裕があれば、読んであげて気づいたことや感想などを描くのもオススメです。
加えて、シールなどを貼って、子どもが絵本を読んで記録するのが楽しみにあるような工夫をしてあげてもよいと思います。
そのため、ぜひ、『絵本の読み聞かせ記録ノート』も作ってみてくださいね!
読み聞かせがもたらす5つのメリット
先程も解説したように、絵本の読み聞かせは、子どもの想像力や表現力をアップさせるためにも大切です。
ただ、実は絵本には他のメリットがあることも現在に至るまでの研究からわかっています。
それは次の4つです。
●言葉の理解・語彙力の増加
●集中力アップ
●絵本の内容に応じた学習ができる
●親子のコミュニケーションとしての役割
これらのメリットに関しては、以下の記事でわかりやすく解説しているので、気になる方はチェックしてみてくださいね!
さいごに
今回は、国内外の研究論文を踏まえて、絵本の読み聞かせの「頻度」について解説してきました。
基本的には、「1日1冊」がひとつの目安となります。
もし、余裕があれば、2~3冊読んであげてもOKです。
大事なのは、1日何冊も読んであげることではなく、1日1冊でも、「読み聞かせの習慣」をつくることです。
そのため、絵本の読み聞かせをしようと考えている方、また、すでに読み聞かせをしている方も今回解説したことを参考にしてみてくださいね!
また、読み聞かせをするときにちょっとした工夫をすることで、子どもの物語の理解度を高めることもできます。
絵本の読み聞かせのコツやテクニックについては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!
山木道子1990 読み聞かせと想像・表現 日本保育学会第43回大会研究論文集, 536-537.
本田和子1980 絵本 村山貞男監修 幼児保育学辞典 明治図書 91.
佐々木宏子1975 絵本と想像性 高文望出版
Ganea, P. A., Pickard, M. B., & DeLoache, J. S. (2008). Transfer between picture books and the real world by very young children. Journal of Cognition and Development, 9(1), 46-66.