「赤ちゃんにテレビを見せるときの対策は?」
「赤ちゃんにテレビを見せるときに気をつけたほうが良い点は?」
普段、お母さま方に関わっていくなかで、このような疑問がよく寄せられます。
まず、そもそもの大前提として、
「生後12ヶ月~18ヶ月未満のお子さんにはテレビを見せない」
こと推奨します。
(『日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会』や『米国小児科学会』でも、そのように推奨されています。詳しくはこちらで解説しています。)
ただ、とはいっても、兄弟がいたり、お母さまお父さまが忙しいと、テレビをまったく見せないことは難しいですよね。
そこで、今回は、赤ちゃん(主に0~2歳)にテレビを見せるときのポイントや注意点について、国内外の研究論文や調査を踏まえて解説していきます。
目次
テレビが赤ちゃんに与える悪影響
赤ちゃんにテレビを見せるときのポイントや注意点を解説するにあたって、まず、テレビがどんな悪影響を与える危険があるのか、簡単に解説します。
現在に至るまで研究から、テレビを赤ちゃん(主に0歳~2歳)の子どもに見せると、さまざまな悪影響を及ぼすことがわかっています。
そのなかでも特に乳幼児期のお子さんがいらっしゃるお母さまお父さまにお伝えしたいのは次の5つです。
①睡眠不足・睡眠障害
②言葉の発達の遅れ
③親子のコミュニケーションの減少
④学びの機会損失
⑤攻撃的・暴力的になりやすくなる
①~⑤について、研究・調査などを踏まえた解説は以下の記事で解説していますので、気になる方はこちらをまずチェックしてみてくださいね。
赤ちゃんにテレビを見せるときに守るべきポイント
赤ちゃんにテレビを見せるときは、必ず守っていただきたいポイントや注意点があります。
これを守らないと、大切なお子さんが睡眠不足を引き起こしたり、言語の発達が遅れたりする危険があります。
そのため、必ず、乳児期のお子さんにテレビを見せるときは次のポイントを守るようにしましょう。
①テレビを長時間見せない(1日20分程度)
②コンテンツを慎重に選ぶ
③親子で対話しながらテレビを見る
④テレビから一定の距離を取る
⑤授乳中や寝る前にテレビを見せない
⑥寝室にテレビを置かない
⑦テレビをつけっぱなしにしないこと
では、①~⑦について、それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
①テレビを長時間見せない(1日20分程度)
テレビを長時間見せないこと、これは最も大切なポイントです。
『日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会』や『米国小児科学会』の提言によれば、本来、0~2歳のお子さんはメディアを見せるべきではないとされています。
そのため、もし見せるのであれば、1日15分~20分程度におさめることをオススメします。
もし、それがむずかしいのであれば、1日のうち、20分を2回か3回に分けて、長くても合計1時間以内には必ずおさめるようにしましょう。
ですが、もう一度念押ししておきますが、本来、0~2歳のお子さんはメディアを見せるべきではないとされています。
②コンテンツを慎重に選ぶ
テレビのコンテンツ、番組選びも大切です。
米国小児科学会では、「メディアをどうしても見せたいのであれば、セサミストリートなど教育的要素を含んだ高品質な番組を選ぶことが大切です。」と提言しています。
例えば、テレビやビデオゲームなどにおける暴力的なコンテンツは、子供を攻撃的にする傾向があることがわかっています(Gentile et al 2017)。
そのため、テレビを見せるときは、慎重にコンテンツや番組を選ぶようにしましょう。
③親子で対話しながらテレビを見る
赤ちゃんを始め、乳幼児期のお子さんにテレビを見せるときは、親子で対話しながら見ることも大切です。
実際、「日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会」は公式HPでは以下のように提言しています。
3.乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう.
見せるときは親も一緒に歌ったり,子どもの問いかけに応えることが大切です.
また、米国小児科学会でも、「保護者は子供たちと一緒にそれを見て、子ども自身が見ている内容を理解できるようにサポートすること」を推奨しています。
これは、例えば、「色」について学習する番組内容であれば、それを見た後に、「お家のなかで赤色の物をいっしょに探してみよう」など語りかけ、テレビで学んだことの理解をより促す働きかけをしてみましょう。
そのため、乳幼児期のお子さんにテレビを見せるときは、親御さん、または大人の人がいっしょに見て、対話しながら見るようにしましょう。
④テレビから一定の距離を取る
赤ちゃんは、テレビをつけると、それに興味をもって常に画面に近い状態で視聴してしまうことが多いです。
テレビを近くで見すぎると、脳の発達や視力にも影響を及ぼす危険があります。
テレビを見せるときに、親御さんが常に隣にいられるのであれば心配いりませんが、もし、やむを得ない事情で一人で見せるときがあるのであれば、赤ちゃん用の柵などをテレビの前につけることをオススメします。
⑤授乳中や寝る前にテレビを見せない
「日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会」は、以下のような提言をしています
4.授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう.
また、米国小児科学でも、食事中や車の移動時間などで、メディアを使わない時間(メディアフリーの時間」)を作ることを推奨しています。
そのため、授乳中や移動中などはテレビやスマホなどメディアの使用は避けるようにしましょう。
また、寝る前にテレビを見せるのもNGです。
10代の子どもたちを対象としたある研究では、就寝前の最後の1時間にテレビを見ると、子供たちは眠りにつきにくくなり、睡眠時間が短くなる傾向がありました(Hysing et al 2015)。
そのため、少なくとも就寝時間の1時間前になったら、テレビやその他のメディアを見せないようにしましょう。
⑥寝室にテレビを置かない
さまざまな調査で、寝室にテレビがあると睡眠時間が短くなる傾向があることがわかっています。
米国の研究者が4歳から7歳までの1400人を超える子供たちの睡眠習慣を調査したところ、寝室にテレビがあると、夜の睡眠時間が平均38分短くなることがわかりました(Cespedes et al 2014)。
また、10~13歳(4年生~7学生)の2000人以上の子どもを対象とした研究では、寝室にテレビが置いてあると、夜の睡眠時間が約18分短くなることがわかりました(Falbe et al 2015)。
そのため、寝室にテレビを置かないようにすることも大切です。
⑦テレビをつけっぱなしにしないこと
赤ちゃんは、テレビがつけっぱなしになっていると、それだけで影響を受けます。
実際、5歳~6歳の子どもを対象とした調査では、テレビに晒されている時間が1日2時間を超える子供は、睡眠障害を引き起こす確率が高まることがわかりました(Paavonen et al 2006)。
赤ちゃんは、5歳~6歳の子どもよりも脳が柔らかいです。
つまり、赤ちゃんはもっと影響を受けやすいということです。
そのため、テレビをつけっぱなしにすることだけは気をつけましょう。
さいごに
今回は、赤ちゃん(主に0~2歳)にテレビを見せるときのポイントや注意点について、国内外の研究論文や調査を踏まえて解説していきした、
乳幼児期のお子さんは、基本的にテレビを見せることは推奨しません。
とはいえ、兄弟がいたり、親御さんが忙しいと、テレビやスマホ、タブレットに頼ってしまうこともあると思います。
そのようなときは、今回解説した点を必ず意識して、メディアを見せるようにしてくださいね!
また、テレビや知育DVDを見せるのであれば、その時間を絵本の読み聞かせに使ったほうが断然効果が期待できます。
絵本の読み聞かせが子どもにもたらす効果については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもチェックしてみてくださいね!
Gentile DA, Berch ON, Choo H, Khoo A, Walsh DA. 2017. Bedroom Media: One Risk Factor for Development. Dev Psychol. 2017 Sep 25. doi: 10.1037/dev0000399. [Epub ahead of print]
Hysing M, Pallesen S, Stormark KM, Jakobsen R, Lundervold AJ, Sivertsen B. 2015. Sleep and use of electronic devices in adolescence: results from a large population-based study. BMJ Open. 5(1):e006748.
Cespedes EM, Gillman MW, Kleinman K, Rifas-Shiman SL, Redline S, Taveras EM. 2014. Television viewing, bedroom television, and sleep duration from infancy to mid-childhood. Pediatrics. 133(5):e1163-71.
Falbe J, Davison KK, Franckle RL, Ganter C, Gortmaker SL, Smith L, Land T, Taveras EM. 2015. Sleep duration, restfulness, and screens in the sleep environment. Pediatrics. 135(2):e367-75.
Paavonen EJ, Pennonen M, Roine M, Valkonen S, Lahikainen AR. 2006. TV exposure associated with sleep disturbances in 5- to 6-year-old children. J Sleep Res. 15(2):154-61.