現在に至るまで研究から、テレビを赤ちゃん(主に0歳~2歳)に見せると、さまざまな悪影響を及ぼすことがわかっています。
逆に、赤ちゃんに知育DVDなどを含めたテレビを見せることで、メリットが得られるという研究結果は得られていません。
そこで、今回は、国内外の研究を踏まえて、テレビが赤ちゃんに与える影響について、わかりやすく解説していきます。
目次
テレビが赤ちゃんに与える悪影響
現在に至るまで研究から、テレビを赤ちゃん(主に0歳~2歳)の子どもに見せると、さまざまな悪影響を及ぼすことがわかっています。
そのなかでも特に乳幼児期のお子さんがいらっしゃるお母さまお父さまにお伝えしたいのは次の5つです。
①睡眠不足・睡眠障害
②言葉の発達の遅れ
③親子のコミュニケーションの減少
④学びの機会損失
⑤攻撃的・暴力的になりやすくなる
では、①~⑤について、研究・調査などを踏まえて、もう少し詳しく見ていきましょう。
①睡眠不足・睡眠障害
まず、さまざまな研究で、赤ちゃんにテレビを見せると、睡眠時間が減ったり、睡眠障害をもたらすことがわかっています。
具体的には、2歳未満の子供およそ700人を対象に行われた調査では、1日1時間テレビやタブレットで何かを見るごとに、子どもたちは睡眠時間が約16分減少することがわかりました(Chen et al 2019)。
また、1歳2ヶ月~2歳3ヶ月(生後14~27ヶ月)の子ども約1700人を対象に調査した研究では、夜にテレビを1時間以上見たた子供は、夜間の睡眠時間が11時間未満になるリスクが高いこともわかりました(McDonald et al 2014)。
米国睡眠医学会(AASM)によれば、1~2歳の子どもの睡眠時間は11時間~14時間を推奨しています。
つまり、夜にテレビを1時間以上視聴すると、十分な睡眠時間を取れなくなる危険が高まるのです。
ほかにも、似たような結果が出ている研究は数多くあります。
赤ちゃんは1日のなかで、寝ている時間のほうが多いですし、睡眠を通してどんどん成長していきます。
その睡眠を妨げると、当然、発達にもよくありません。
そのため、睡眠不足や睡眠障害を引き起こさないためにも、赤ちゃんにはテレビは見せないことをオススメします。
②言語の発達の遅れ
テレビを赤ちゃんに見せると、言語の発達に遅れが生じるリスクも指摘されています。
ちなみに、これは知育系のDVDなども同じです。
子どもの頭を良くしたいと思って、幼少期からお子さんに知育DVDを見せている親御さんも多いと思いますが、実際、知育DVDが赤ちゃんのIQを高めるという研究結果は今のところ出ていません。
むしろ、子どもに害を与えることもわかっています。
実際、ワシントン大学の研究チームが、ディズニー・カンパニーの傘下であるベイビー・アインシュタインの知育DVDシリーズを用いて調査しました。
研究チームは、製品が対象とする17ヶ月~24ヶ月の幼児に、このDVDを見せたが、語彙力には一切の変化が見られなかったと発表しています。
それどころか、1日に1時間、乳幼児向けのDVDやビデオを見て過ごした赤ちゃんは、いっさい見ていない赤ちゃんに比べて、理解できる単語の数が平均6語~8語少なかったこともわかっています。
そのため、言語の発達を考えても、赤ちゃんにテレビやDVDを見せることはオススメしません。
また、知育DVDの効果については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてくださいね!
③親子のコミュニケーションの減少
テレビを見る時間が増えると、自然と親子のコミュニケーションの時間が減ってしまいます。
これは、赤ちゃんの言語の発達や脳の発達を踏まえると、非常にもったいないです。
赤ちゃんは、基本的に人間と直接対話することで、言語を習得することもわかっています (Kuhl et al 2003)。
逆に、テレビやDVDを一人でみて、そこから知識を吸収したり、新しい言葉を習得したりすることは難しいです。
そのため、テレビを見せるよりも、お母さんお父さんが直接話しかけてあげたり、絵本を読んであげたりするほうが、発達を踏まえて断然良いということです。
ちなみに、絵本による子どもへの効果については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもチェックしてみてくださいね!
④学びの機会損失
これも③と似ていますが、テレビを見る時間が増えると、どうしても他の学びの機会損失につながってしまいます。
たとえば、日中、1日1時間程度テレビを見せているとします。
でも、その1時間を、絵本の読み聞かせや玩具をつかった遊び、親子体操などに使ったら、より多くの学びを得ることができます。
逆に、1時間テレビの前に座っていても、赤ちゃんは自分で多くの学びを得ることはできません。
また、赤ちゃんの頃の脳はとても柔らかいので、いろいろな体験を通して、さまざまなことを吸収します。
そのような貴重な時期は、ずっと続くわけではありません。
そのため、乳幼児期の貴重な時間をテレビに多く費やすしてしまうと、学びの機会損失につながるリスクもあるのです。
⑤攻撃的・暴力的になりやすくなる
現在に至るまでの研究から、暴力的なコンテンツを視聴した子どもは、暴力的・攻撃的になりやすいこともわかっています。
ある調査では、4歳のときにテレビで暴力的なコンテンツを多く視聴した子供は、わずかですが、感情的な問題を経験するリスクが高まり、2年生では学業成績が低下したという結果が得られました(Fitzpatrick et al 2012)。
また、コーカー氏らが11歳(5年生)の子供たちを対象に行った研究では、社会経済的地位や精神面における健康などの、さまざまな要因を調整した後でも、「児童の暴力的なコンテンツの視聴は身体的攻撃に関連していた」ことがわかりました。(Coker et al 2015)。
※身体的攻撃とは、殴る、蹴る、噛む、武器を使う、おもちゃや持ち物を壊すなど、他者に対して身体的危害を引き起こす、または脅かす行動を指します。
そのため、赤ちゃんに、殴る蹴るのシーンがある暴力シーンを見せるのは避けるようにしましょう。
赤ちゃんにテレビを見せるときの注意点
赤ちゃんにテレビを見せないほうがいいとわかっていても、兄弟がいたり、やむを得ない事情で、どうしてもテレビを完全に見せないことは難しいというケースがありますよね。
そのような場合は以下の3点を必ず気をつけるようにしましょう。
①テレビをつけっぱなしにしない
②テレビを一人で見せない
③コンテンツを慎重に選ぶ
④授乳中や食事中はテレビをつけないこと
⑥ビデオは続けて反復視聴しないこと
⑦子ども部屋や寝室にはテレビを置かないこと
これらのことは、「日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会」や「米国小児科学会」でも推奨されています。
そのため、赤ちゃんはテレビを見せるときは気をつけるようにしましょう。
テレビを見せていいのは早くても2歳以降
では、いつからお子さんにテレビを見せてもいいのか。
結論からお伝えすると、早くて2歳以降です。
ちなみに、「日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会」は公式HPでは以下のように記載されています。
1.2歳以下の子どもには,テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう.
内容や見方によらず,長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります.
また、米国小児科学会では、「18ヶ月未満(2歳半未満)のお子さんにはメディアを始めとした画面の使用を避けること」を推奨しています。
つまり、僕の個人的な意見としては、
「生後12ヶ月~18ヶ月未満のお子さんにはテレビを見せない」
ことをオススメします。
赤ちゃんにいつからテレビを見せていいのかについての詳しい解説は以下の記事にありますので、こちらもチェックしてみてくださいね!
さいごに
今回は、テレビが赤ちゃんに与える影響について、国内外の研究を踏まえてわかりやすく解説してきました。
正直、赤ちゃんにテレビを見せても、良い影響はほとんど期待できません。
そのため、下手にテレビを見せるなら、親御さんが話しかけたり、絵本の読み聞かせをしてあげるほうが断然良いです。
絵本の読み聞かせが子どもにもたらす効果については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもチェックしてみてくださいね!
Chen B, van Dam RM, Tan CS, Chua HL, Wong PG, Bernard JY, Müller-Riemenschneider F. 2019. Screen viewing behavior and sleep duration among children aged 2 and below. BMC Public Health. 19(1):59
McDonald L, Wardle J, Llewellyn CH, van Jaarsveld CH, Fisher A. 2014. Predictors of shorter sleep in early childhood. Sleep Med. 15(5):536-40.
Kuhl PK, Tsao FM, and Liu HM. 2003. Foreign-language experience in infancy: effects of short-term exposure and social interaction on phonetic learning. Proc Natl Acad Sci U S A. 100(15):9096-101.
Fitzpatrick C, Barnett T, and Pagani LS. 2012. Early exposure to media violence and later child adjustment. J Dev Behav Pediatr. 2012 May;33(4):291-7.
Coker TR, Elliott MN, Schwebel DC, Windle M, Toomey SL, Tortolero SR, Hertz MF, Peskin MF, Schuster MA. 2015. Media violence exposure and physical aggression in fifth-grade children. Acad Pediatr. 15(1):82-8.