デジタル教育

【テレビやYoutubeによる子どもへの悪影響】研究論文を踏まえて解説!

今回は、テレビやYoutubeなどの動画を見ることで、子どもにどんな悪影響を与えるのかについて、国内外の研究を踏まえて解説していきます。

そのため、普段から子どもにテレビやタブレット、スマホを見せている方は、必ずチェックしてくださいね!

テレビや動画が子どもに与える悪影響

テレビや動画によって子どもにもたらされる悪影響は、さまざまな研究で明らかになっています。

そのなかで、特にお母様やお父様にお伝えしたい悪影響は次の3つです。

①睡眠不足や睡眠障害につながる

②暴力的・攻撃的になりやすい

③言語の発達に遅れが生じやすい

では、①~③について、国内外の調査や研究を踏まえながら、もう少し詳しく見ていきましょう。

①睡眠不足や睡眠障害につながる

子どもはテレビや動画を見すぎると、睡眠不足や睡眠障害につながることがわかっています。

まず、ご紹介したいのが、チェン氏らがシンガポールでおこなった調査です(Chen et al 2019)。

この調査は、2歳未満の子供およそ700人を対象におこなわれました。

その結果、1日1時間テレビやタブレットで何かを見るごとに、子どもたちは睡眠時間が約16分減少することがわかりました。

もう一つご紹介したいのが、マクドナルド氏らがイギリスでおこなった調査です。

この調査は、1歳2ヶ月~2歳3ヶ月(生後14~27ヶ月)の子ども約1700人を対象におこなわれました。

その結果、夜にテレビを1時間以上見たた子供は、夜間の睡眠時間が11時間未満になるリスクが高いこともわかりました(McDonald et al 2014)。

ちなみに、米国睡眠医学会(AASM)によれば、1~2歳の子どもの睡眠時間は11時間~14時間を推奨しています。

そのため、夜にテレビを1時間以上視聴すると、十分な睡眠時間を取れなくなる危険が高まるのです。

他にも、フランス、スペイン、米国で3歳から5歳の子供たちの睡眠を研究している研究者たちが、テレビの視聴時間と睡眠時間の減少について、同じような研究報告をしています。(Plancoulaine et al 2018; Marinelli et al 2014; Cespedes et al 2014; Helm およびSpencer 2019)。

また、米国の約500人の小学生を対象とした別の調査では、テレビの使用は、就寝時の抵抗や入眠問題、睡眠への不安、睡眠時間の短縮などと関係があることがわかりました。(Owens et al 1999)。

さらに、8歳から17歳までの400人以上の子供をもつアメリカの保護者を対象とした調査では、テレビ画面、携帯電話、タブレットなど、画面に、より多くの時間使った子供たちの方が睡眠障害を訴えていることがわかりました。(Parent et al 2016)。

ほかにも、アメリカの600人以上の就学前の子供を対象とした調査で、ギャリソンとその同僚らは、子供たちの普段のメディアの使い方と睡眠状況について、両親に尋ねました(Garrison et al 2011)

その結果、子供が日中に暴力的なコンテンツを見た場合、彼らは悪夢を見る可能性が高くなることがわかりました。

さらに、朝の目覚めにも問題があり、日中の疲れを感じる可能性が高かったこともわかりました。

このように、テレビやタブレット、スマホなどにおけるコンテンツの視聴は、子どもの睡眠不足や睡眠障害をもたらすリスクがあります。

また、その影響は、子どもが幼ければ幼いほど、深刻であるとも言えます。そのため、まずはこのようなリスクがあることをしっかりと理解しておくようにしましょう。

②暴力的・攻撃的になりやすい

暴力的なコンテンツを視聴した子どもは、暴力的・攻撃的になりやすいこともわかっています。

フィッツパトリック氏らによる調査で、4歳のときにテレビで暴力的なコンテンツを多く視聴した子供は、わずかですが、感情的な問題を経験するリスクが高まり、2年生では学業成績が低下したという結果が得られました(Fitzpatrick et al 2012)。

また、コーカー氏らが11歳(5年生)の子供たちを対象に行った研究では、社会経済的地位や精神面における健康などの、さまざまな要因を調整した後でも、「児童の暴力的なコンテンツの視聴は身体的攻撃に関連していた」ことがわかりました。(Coker et al 2015)。

※身体的攻撃とは、殴る、蹴る、噛む、武器を使う、おもちゃや持ち物を壊すなど、他者に対して身体的危害を引き起こす、または脅かす行動を指します。

さらに、ジェンティーレ氏らによる最近の調査では、子供を最大24か月追跡し、彼らの態度や行動が時間とともにどのように変化したかをチェックしました。

その結果、テレビやビデオゲームなどにおける暴力的なコンテンツは、子供を攻撃的にする傾向があることもわかりました(Gentile et al 2017)。

また、クリスタキス氏とその同僚らによる興味深い研究もあります。

この研究では、ランダムに選ばれた複数の家庭に、日頃見ている暴力的行為を含むコンテンツの代わりにセサミストリートなど非暴力的な教育用テレビ番組を視聴するように指示しました。

その結果、子供は問題行動が少なくなり、 6か月後の社会的能力が上がったことがわかりました。(Christakis et al 2013)。

さらに、米国小児科学会は、現実に起きている暴力行為の10%から20%はメディアによって暴力シーンを見聞きしたためだと報告しています。

このように、テレビやその他メディアのコンテンツは、子どもに大きな影響を与えます。

そのため、しっかりと、保護者がコンテンツをチェックすることが大事になります。

③言語の発達に遅れが生じやすい

乳幼児期の子どもは、テレビを見る時間が長いと、めぐりめぐって言語の発達に遅れが生じる危険があります。

また、乳幼児期のお子さんがいるご家庭では、幼児向けの英語や知育のDVD教材を使用しているという方も多いと思います。

ですが、そのような方々にぜひ知っておいてただきたい研究があります。

それは、クール氏らによる「赤ちゃんの第2言語習得に関する研究」です。 (Kuhl et al 2003)。

この研究では、赤ちゃんが中国語話者と直接対話する形で、 12回のセッションを受けました。

その後、セッションを受けた赤ちゃんは、中国語における特定の発音を聞き分ける力が強化されたことがわかりました。

ここまでは、みなさんも予想通りだと思います。

ですが、クールらは、別の実験もおこないました (Kuhl 2004)。

この実験では、テレビを通して中国語話者のセッションを受けるグループと、クマのぬいぐるみの映像を見せながら音声のみでセッションを受けるグループの2つに分けました。

その結果、両方のグループとも、学習効果は得られませんでした。

つまり、幼い子どもは言語を習得するときは、直接人と対話し、関わり合うことが大事になるといえます。

この研究を踏まえて、テレビと言葉の発達について、もう一度考えてみましょう。

テレビをずっとつけておくと、子どもは自然とテレビを見てしまいます。

そうなると、幼い子どもが言語を習得する貴重な対話の時間がテレビに奪われてしまいます。

すると、当然、言語の習得が遅れる可能性が高くなりますよね。

ほかにも、幼児に関わらず、テレビの視聴時間が長いと、子どもの脳の発達に大切な運動や遊びの時間がなくなるので、発達に遅れが生じる危険が高まるといえます。

テレビ・その他メディアを見させるときの6つのポイント

先程解説したテレビやその他メディアによる悪影響を防ぐために、テレビを子どもに見せるときは、次の6つのポイントを意識するようにしましょう。

①テレビの時間を制限する

②テレビの内容を親がチェックする

③画面の大きさを気をつける

④テレビを寝室に置かない

⑤寝る1時間前のテレビ視聴は避ける

⑥子どもが受動的にテレビに晒されるのを避ける

では、①~⑥について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

①テレビの時間を制限する

米国小児科学会では、テレビの視聴時間について、次のように推奨しています。

◯18か月(1歳半)未満の子供は、ビデオチャット以外の画面メディアの使用を避けること。

※ビデオチャットなど、双方向でコミュニケーションを取れるものはOK!

◯18〜24か月(1歳半~2歳)の子供を持つ親は、セサミストリートなど教育的要素を含んだ高品質な番組を選ぶことが大切です。

※このとき、暴力的コンテンツを含む内容や大人向けのコンテンツは避けるようにしましょう。

また、保護者は子供たちと一緒にそれを見て、子ども自身が見ている内容を理解できるようにサポートする必要があります。

・2歳から5歳までの子供は、テレビをはじめ、メディアの使用を1日1時間に制限すること、そして、教育的要素を含む高品質な番組を選ぶようにしましょう。

また、保護者は、テレビを子供と一緒に見て、子ども自身が見ているものを理解できるようにサポートする必要があります。

さらに、テレビで見た内容を現実世界に当てはめて、子どもの理解を促すことも大切です。

※例えば色について学ぶ番組内容であれば、それを見た後に、「お家のなかで赤色の物をいっしょに探してみよう」など語りかけ、テレビで学んだことの理解をより促す働きかけをしてみましょう。

・6歳以上の子供については、テレビをはじめとしたメディアの使用に費やす時間と、使用するメディアの種類に一貫した制限を設け、それらのメディアが十分な睡眠や運動、遊びなど健康に必要不可欠な行動に取って代わらないように注意する必要があります。

【参考】

American Academy of Pediatrics Announces New Recommendations for Children’s Media Use

ほかにも、

・夕食を食べるときや車を運転するときはテレビを見せない

・寝室にテレビを置かない

などメディアフリーの時間・空間をつくることも大切です。

・オンラインとオフラインで他人を尊重することを含め、オンラインの市民権と安全性について継続的にコミュニケーションをとること。

を大事にすることも必要です。

②テレビの内容を親がチェックする

子どもは、テレビやその他のメディアで見た内容に影響を受けやすいです。

例えば、テレビやビデオゲームなどにおける暴力的なコンテンツは、子供を攻撃的にする傾向があることがわかっています(Gentile et al 2017)。

また、ランダムに選ばれた複数の家庭に、日頃見ている暴力的行為を含むコンテンツの代わりにセサミストリートなど非暴力的な教育用テレビ番組を見せるように指示したところ、半年後には、子どもの問題行動が減り、 社会的能力が上がったこともわかっていま

そのため、テレビを見せるときは、その番組内容が子どもに悪影響を与える心配がないかをしっかりと確認することが大切です。

③画面の大きさを気をつける

子どもに何かの番組や動画を見せるときは、テレビやタブレット、スマホなど、どのメディアを使って見せるかも重要です。ここでご紹介したいのが、6か月から3歳までの子供を対象に実施されたイギリスの研究です。

この研究では、テレビ画面とタブレットのどちらでコンテンツを見せるほうが、子どもの睡眠に大きな悪影響を与えるか調査しました。(Cheung et 2017)。

その結果、テレビよりも、タブレットで見るほうが睡眠を妨げることがわかりました。

また、テレビの視聴は、日中の睡眠(昼寝)に影響を与えますが、タブレットでの視聴は日中の睡眠だけでなく、夜間の睡眠にも深刻な影響をもたらすことがわかりました。

そのため、子どもに何かの番組や動画を見せるときは、スマホやタブレットなど画面の小さいメディアの使用はできるだけ避けるようにしましょう。

④テレビを寝室に置かない

さまざまな調査で、寝室にテレビがあると睡眠時間が短くなる傾向があることがわかっています。

では、寝室にテレビがあることで、具体的にどのくらい睡眠に悪影響を与えるのかについて、研究や調査を踏まえて見ていきましょう。

米国の研究者が4歳から7歳までの1400人を超える子供たちの睡眠習慣を調査したところ、寝室にテレビがあると、夜の睡眠時間が平均38分短くなることがわかりました(Cespedes et al 2014)。

また、10~13歳(4年生~7学生)の2000人以上の子どもを対象とした研究では、寝室にテレビが置いてあると、夜の睡眠時間が約18分短くなることがわかりました(Falbe et al 2015)。

ほかにも、寝室にテレビやPC、タブレットなどのメディアをもつ子供は、読書や運動などの子どもの発達に重要な活動に取って代わる可能性が高いことも指摘されています。 (Gentile et al 2017)。

さらに、寝室にテレビがあることで、肥満やビデオゲーム中毒のリスクにもつながります。

そのため、できるだけ寝室にテレビを置かないようにすることも大切です。

⑤寝る1時間前からはテレビを見せない

10代の子どもたちが寝る直前にブルーライトや刺激的なコンテンツにさらされると、睡眠障害や睡眠不足が発生する可能性があることが指摘されています。

10代の子どもたちを対象とした研究では、就寝前の最後の1時間にテレビを見ると、子供たちは眠りにつきにくくなり、睡眠時間が短くなる傾向がありました(Hysing et al 2015)。

そのため、就寝時間の1時間前になったら、なるべくテレビやその他のメディアを見せないことも大切です。

⑥子どもが受動的にテレビに晒されるのを防ぐ

子どもは、テレビを見ていないくても、テレビがついている状況に晒される(受動的喫煙に近いイメージ)だけで悪影響を受けることもあります。

5歳~6歳の子どもを対象とした調査では、テレビに晒されている時間が1日2時間を超える子供は、睡眠障害を引き起こす確率が高まることがわかりました(Paavonen et al 2006)。

また、成人向けのコンテンツに子どもが受動的に晒された場合にも似たようなリスクにつながることがわかりました。

そのため、

・テレビの前に子どもを放置しない

・テレビをつけっぱなしの状態にしない

ことも大切です。

さいごに

今回は、テレビやYoutubeなどにおけるコンテンツの視聴が、幼い子どもにどんな影響を与えるのかについて、国内外の研究を踏まえて解説してきました。

テレビは一家に一台あるので、生活から完全に切り離すことはむずかしいかもしれません。

そのため、今回解説した点を踏まえて、テレビやその他のメディアとの関わり方をしっかりと見直して、改善してみてくださいね!

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