絵本の読み聞かせは、乳幼児期のお子さんにやってあげたほうがいいことのひとつです。
“百害あって一利なし”という言葉がありますが、絵本はその逆で”百利あって一害なし”と言っても過言ではありません。
※ちなみに、米国小児科学会でも、できるだけ早くから絵本を読んであげることを推奨しています。
では、具体的にどんな効果やメリットがあるのでしょうか?
そこで、今回は国内外の研究論文や調査を踏まえて、絵本の読み聞かせがもたらす効果について、わかりやすく解説していきます。
目次
読み聞かせがもたらす5つの効果
現在に至るまでの研究で、絵本にはさまざまなメリットや効果があることがわかっています。
そのなかでも、特に皆さんにご紹介したいのが次の6つです。
①想像力を育む
②言葉の理解・語彙力の増加
③集中力アップ
④絵本の内容に応じた学習ができる
⑤親子のコミュニケーションとしての役割
では、それぞれのメリットについて、研究論文や調査を踏まえて詳しく見ていきましょう。
①想像力を育む
絵本の読み聞かせは、想像力を育むことがわかっています。
絵本の読み聞かせを通して、絵と言葉によって表現された世界に触れることで、現実の世界を超えたイメージの世界を楽しめるようになるとされています(本田 1980)。
また、絵本から、創造力やきれいなもの・美しいものを発見する感動、ファンタジーの世界で遊ぶことの楽しさ、さまざまな人の感情を学ぶことができるともされています。(佐々木 1975)
さらに、幼稚園年長児に、 1年間、計画的に読み聞かせを行った結果、そうでない子どもたちと比較して、 「作話テスト」において、優れた成績が得られたこともわかっています。(山木 1990)
この作話テストでは、文のない絵だけの本をその場で見せて、作話させるというテストをおこないました。
その結果、最低1日1冊の計画駅な読み聞かせをしていたグループのお子さんたちは、豊かな想像力や表現力を身につけていることがわかりました。
このようなことから、絵本の読み聞かせは子どもの想像力を育むといえます。
②言葉の理解・語彙力の増加
読み聞かせをしてあげることで、子どもが理解できる言葉が増え、結果的に語彙力が増加することがわかっています。
まず、読み聞かせに関わらず、お母さんが乳幼児期の子どもにたくさん話しかければかけるほど、子どもが理解できる言葉の数が多くなります(Hurtado, Marchman, & Fernald, 2008)。
さらに、お母さんが絵本を読んであげることで、普段の会話では使わない表現や言葉を子どもに聞かせることができます。
そうすることで、子どもの理解できる言葉の数が必然的に増えていくとされています。
つまり、乳幼児期にどれだけ読み聞かせしてあげるかが、その後の子どもの語彙力に重要であるとも考えられます。
このように、お母さんによる読み聞かせを通して、さまざまな表現や言葉にふれさせることで、子どもの語彙力をアップさせることができます。
③集中力を高める
読み聞かせによって、乳幼児期の子どもが集中できる時間をつくれることもわかっています。
デジタル絵本における「読み聞かせ」と「黙読」の集中度や理解度を比較した実験では、小学校低学年までの子どもは、一人で読む「黙読」より、声に出して呼んでもらう「読み聞かせ」のほうが「楽しさ」「理解」「集中」のすべての指標において高い数値を示したことがありました。(かわ 2019)
※ちなみに、紙書籍の絵本と比べて、電子(デジタル)書籍においても、消極的な影響は見られないとの研究があります(清野 2012)。
そのため、乳幼児期の読み聞かせの習慣をつけることで、子どもが集中する時間をつくることができ、結果的に人の話を聞けるようになったり、集中力を高めることができると考えられます。
④絵本の内容に応じた学習ができる
絵本の読み聞かせは、その内容に応じた学習ができることもわかっています。
とある研究では、15ヶ月~18ヶ月の乳幼児の子どもは、絵本で見聞きしたものであれば、現実世界で実物を見たとき、同じものとして認知できることがわかっています(Ganea, Pickard, & DeLoache, 2008)。
つまり、絵で見たものを実物に変換できるということです。
(たとえば、絵本で「りんご」の絵を見た後、現実世界で実物のりんごを見たら、同じものとして認知できるということです。また、絵本におけるイラストが、より実物に近いほうが、認知できる可能性も高まります。)
また別の研究では、3歳~4歳の子どもに、カエルとトカゲがどのようにして、鳥から食べられないように身を守っているかについて説明した絵本を読み聞かせしました。
※自分の体をカモフラージュすることで、鳥から身を守ることができるという内容。
その後、カモフラージュした生物とそうでない生物の2枚の絵をみせて、どちらが鳥に食べらる可能性が高いかを子どもたちに質問したところ、カモフラージュしていない生物のほうが食べられる可能性が高いことを推測できました。
※カモフラージュ
このように、子どもたちは幼くても絵本の読み聞かせをしてもらうことで、その絵本の内容に応じた知識を得ることができるのです。
⑤親子のコミュニケーションとしての役割
これは、②とほとんど同じですが、絵本の読み聞かせは、親子のコミュニケーションとしての役割も果たします。
先程もお伝えしたように、絵本の読み聞かせをおこなうことで、普段親御さんが子どもに話しかけるときに使わない表現や言葉に触れさせることができます。
そうすることで、子どもは豊かな表現力や語彙力を身につけることができます。
また、絵本作家の赤羽は、母親による読み聞かせは、子守歌に代わるものであり、お母さんと一緒にいるという”安心感”と”聞き慣れた心地の良い声”が子どもと母親の結びつきを強め、より良好な母子関係を築くために重要であると指摘しています(赤羽 1986)。
つまり、絵本の読み聞かせを通して、二人でファンタジーな世界の楽しさを共有することは、親子のコミュニケーションの役割を果たすのです。
さいごに
今回は絵本の読み聞かせがもたらす効果について、国内外の研究を踏まえて解説してきました。
絵本は、呼んであげるだけで情緒的にも、脳の発達的にもプラスの効果をもたらしてくれます。
また、想像力や語彙力アップだけでなく、親子の絆を強めるためにも役立ちます。
そのため、時間が許す限り、お子さんにたくさんの絵本を読んであげてくださいね!
本田和子1980 絵本 村山貞男監修 幼児保育学辞典 明治図書 91.
佐々木宏子1975 絵本と想像性 高文望出版
山木道子1990 読み聞かせと想像・表現 日本保育学会第43回大会研究論文集, 536-537.
Nereyda Hurtado, Virginia A. Marchman, Anne Fernald.(2008).”Does input influence uptake? Links between maternal talk, processing speed and vocabulary size in Spanish‐learning children”
かわこうせい(2019)「デジタル絵本の受容に関する研究:読み聞かせと黙読との比較」静岡文化芸術大学研究紀要 (19), 93-96,
清野 すみれ・山添 花恵・木村 美幸・吉田 征ニ・河合 隆史( 2012) 絵本 の電子書籍化と読み聞かせへの影響(2),日本人間工学会大会講演集 53:2E4-3
Ganea, P. A., Pickard, M. B., & DeLoache, J. S. (2008). Transfer between picture books and the real world by very young children. Journal of Cognition and Development, 9(1), 46-66.
Ganea, P. A., Ma, L., & DeLoache, J. S. (2011). Young children’s learning and transfer of biological information from picture books to real animals. Child Development, 82(5), 1421-1433.
The American Academy of Pediatrics encourages doctors to tell parents to read aloud to their children every day, beginning right after they’re born.”Why It Is Never Too Early to Start Reading With Your Baby”
赤羽末吉(1986)子どもの絵本をみつめるIL1家として- 日本子どもの本研究会編 子どもの本の学校 ほるぷ出版