「赤ちゃんに暴力シーンを見せたら、悪い影響を与える?」
「残酷な暴力シーンを子どもに見せるとよくない?」
テレビを見せるときに、殴ったり、蹴ったり、斬ったりなど、攻撃的なシーンがあると、「子どもに良くない影響を与えないのかな…」とついつい不安になりませんか?
実は、暴力シーンを含むテレビ番組を子どもに見せた場合、どのような影響を与えるかという研究は、海外を含めいくつか調査されています。
結論からお伝えすると、暴力シーンが多い番組を見せることで、
・子どもが殴る蹴るなどの攻撃的な性格になる
・学校の成績が下がる
などのリスクがあることが指摘されています。
そこで、今回は国内外の研究論文や調査を踏まえて、暴力シーンが子どもに与える影響について、わかりやすく解説していきます。
なお、今回ご紹介することは、赤ちゃん(主に0歳~2歳)にも大きく関係するので、乳児期のお子さんがいらっしゃるお母さまお父さまもしっかりとチェックしてくださいね!
目次
暴力シーンが子どもに与える悪影響
現在に至るまでの研究から、暴力シーンを含むコンテンツ(番組)を子どもに見せることで、さまざまな悪影響を及ぼす危険があることがわかっています。
そのなかでも、特にお母さまお父ささま方にお伝えしたいのは次の3つです。
①睡眠不足・睡眠障害をもたらす
②学業成績の低下をもたらす
③子どもを攻撃的な性格にする
では、①~③について、それぞれ研究論文などを踏まえて、もう少し詳しく見ていきましょう。
①睡眠不足・睡眠障害をもたらす
まず、暴力シーンを多く見せると、子どもの睡眠に悪影響を及ぼす危険が指摘されています。
ある研究では、学齢期(6~15歳)の子どもを対象に調査を実施したところ、日頃テレビで暴力シーン見ることが少ない子どもは、そうでない子どもに比べてより多くの睡眠をとる傾向があることがわかっています(Gentile et al 2014)。
また、他の研究でも、未就学児の両親が、日頃見せている、暴力的なコンテンツの代わりに、向社会的な(※)番組を見せたところ、子供たちの睡眠障害は少なくなったことがわかりました(Garrison and Christakis 2012)。
子どもの発達やパフォーマンスを考えても、睡眠はとても大切です。
そのため、暴力シーンを見せることで、大切な睡眠の質を悪くしないように気をつける必要があります。
※向社会的とは?
「反社会的」の反対語です、「他の人や他の集団を助け、役立とうとする行動」のことを意味します。
また、対人的なつながりを積極的に求め、促進する行動のことを指します。
②学業成績の低下をもたらす
暴力シーンを含むテレビ番組や動画を子どもに見せると、学校の成績などにも悪影響を与える可能性があることが指摘されています。
フィッツパトリック氏らによる調査で、4歳のときにテレビで暴力的なコンテンツを多く視聴した子供は、わずかですが、感情的な問題を経験するリスクが高まり、2年生では学業成績が低下したという結果が得られました(Fitzpatrick et al 2012)。
そのため、暴力シーンを見せすぎると、自分の感情をコントロールしたりするのがむずかしくなったり、小学校に入ってからの学業に良くない影響を与えるリスクがあるので注意しましょう。
③子どもを攻撃的な性格にする
暴力シーンをたくさん見せると、子どもが攻撃的な性格になったり、暴力に走りやすくなる危険も指摘されています。
コーカー氏らが11歳(5年生)の子供たちを対象に行った研究では、社会経済的地位や精神面における健康などの、さまざまな要因を調整した後でも、「児童の暴力的なコンテンツの視聴は身体的攻撃に関連していた」ことがわかりました。(Coker et al 2015)。
さらに、クリスタキス氏とその同僚らによる興味深い研究もあります。
この研究では、ランダムに選ばれた複数の家庭に、日頃見ている暴力的行為を含むコンテンツの代わりにセサミストリートなど非暴力的な教育用テレビ番組を視聴するように指示しました。
その結果、子供は半年後には問題行動が少なくなり、社会的能力が上がったことがわかりました。(Christakis et al 2013)。
テレビや動画の内容を親がチェックすることが大事!
米国小児科学会は、現実に起きている暴力行為の10%から20%はメディアによって暴力シーンを見聞きしたためだと報告しています。
このように、子どもは、テレビやその他のメディアで見た内容に影響を受けやすいです。
そのため、テレビを見せるときは、その番組内容が子どもに悪影響を与える心配がないかをしっかりと確認することが大切です。
テレビを見させるときの6つのポイント
先程解説したテレビやその他メディアによる悪影響を防ぐために、テレビを子どもに見せるときは、次の6つのポイントを意識するようにしましょう。
①テレビの時間を制限する
②テレビの内容を親がチェックする
③画面の大きさを気をつける
④テレビを寝室に置かない
⑤寝る1時間前のテレビ視聴は避ける
⑥子どもが受動的にテレビに晒されるのを避ける
①~⑥については、以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも必ずチェックしてくださいね!
さいごに
今回は国内外の研究論文や調査を踏まえて、暴力シーンが子どもに与える影響について、解説してきました。
アニメや映画では、作品を面白くするために、暴力シーンが多く含まれます。
子どもに身近なヒーローものでも、暴力シーンは含まれています。
ただ、特に男の子は、ヒーローごっこや戦いごっこが好きです。
そのため、そういった暴力シーンを含む番組や動画を全部禁止する必要はありません。
ただ、見せ過ぎもよくありません。
そのため、今回解説した点を踏まえて、テレビや動画を見えるときは、その内容を見せてもいいのか、親御さんがあらかじめチェックしてあげるようにしましょう!
Gentile DA, Reimer RA, Nathanson AI, Walsh DA, Eisenmann JC. 2014. Protective effects of parental monitoring of children’s media use: a prospective study. JAMA Pediatr. 168(5):479-84.
Garrison MM and Christakis DA. 2012. The impact of a healthy media use intervention on sleep in preschool children. Pediatrics. 130(3):492-9.
Fitzpatrick C, Barnett T, and Pagani LS. 2012. Early exposure to media violence and later child adjustment. J Dev Behav Pediatr. 2012 May;33(4):291-7.
Fitzpatrick C, Barnett T, and Pagani LS. 2012. Early exposure to media violence and later child adjustment. J Dev Behav Pediatr. 2012 May;33(4):291-7.
Coker TR, Elliott MN, Schwebel DC, Windle M, Toomey SL, Tortolero SR, Hertz MF, Peskin MF, Schuster MA. 2015. Media violence exposure and physical aggression in fifth-grade children. Acad Pediatr. 15(1):82-8.
Christakis DA, Garrison MM, Herrenkohl T, Haggerty K, Rivara FP, Zhou C, Liekweg K. 2013. Modifying media content for preschool children: a randomized controlled trial. Pediatrics 131(3):431-8.