近年、幼児教育や知育ブームが来ていて、お子さんが小さいうちから暗記力を鍛えたり、英語を習わせたりなどしている親御さんも少なくと思います。
また、なかには、知育DVDなどを買って、小さいお子さんに積極的に見せているお母さんお父さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
ただ、実は、現在に至るまでの研究で、乳幼児向けの知育DVDには、学習効果が期待できず、逆に害を及ぼすリスクがあることが報告されています。
今回は、乳幼児向けの知育DVDの学習効果や子どもへの影響について、海外の研究を踏まえて解説していきます。
目次
知育DVDは子どもに害を与えるリスクもある
知育DVDについて、面白いエピソードがひとつあります。
一時期、アメリカで、乳幼児向けの教育用DVDブームがおきました。
この時期、アメリカでは、どんどんどんどん乳幼児期向けの知育DVDが作成・販売されて、店頭にはズラッと陳列されていたそうです。
さらに、どのDVD教材も、乳幼児の認知能力を向上させるという宣伝文句が謳われていたそうです。
それに対して怪しいと思ったワシントン大学の研究者グループは、独自に調査をおこないました。
その際、ウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下であるベイビー・アインシュタインの知育DVDシリーズを調査対象として用いました。
その結果、知育DVDには何の効果も見られなかったことがわかりました。
ワシントン大学の研究チームは、その論文の中で、製品が対象とする17ヶ月~24ヶ月の幼児に、このDVDを見せたが、語彙力には一切の変化が見られなかったと発表しています。
さらに、これらの知育DVDは、子どもに害を与えていたことまでもわかりました。
1日に1時間、乳幼児向けのDVDやビデオを見て過ごした赤ちゃんは、いっさい見ていない赤ちゃんに比べて、理解できる単語の数が平均6語~8語少なかったのです。
そして、この一連の研究結果みたディズニー・カンパニーの会長は、ワシントン大学の学長に直々に電話して、「この研究には欠陥がある」といって、論文の撤回を求めたそうです。
ですが、大学側は研究者たちの間で協議はしたものの、主張は曲げず、プレスリリースしました。
リリース当初は、ディズニー側も騒ぎ立てましたが、その後は沈黙を守ったそうです、
それどころか、2年後の2009年10月には、ディズニー・カンパニーが製品のリコールを実施すると発表しました。
そして、「ベイビー・アインシュタイン」製品を購入した消費者には払い戻しを申し出ました。
その後、責任をもって、製品のパッケージから「知育」を意味する”エデュケーショナル”という単語を消したそうです。
(参照:ジョン・メディナ(2020)『100万人が信頼した脳科学者の 絶対に賢い子になる子育てバイブル』(栗木さつき訳)ダイヤモンド社 pp.202-203)
おそらくですが、日本の知育DVDでも、しっかりとエビデンスや根拠がないのに、このようなワードを使っている製品があるかもしれません。
そのため、みなさんも製品選びの際には注意してくださいね!
少し話は逸れましたが、このことからもわかるように、特に0歳~2歳のお子さんには、知育DVDを見せても大きな学習効果が期待できないことがわかります。
知育DVDや教育用テレビ番組は効果がないのか?
クリスタキス氏とその同僚らによる興味深い研究もあります。
この研究では、ランダムに選ばれた複数の家庭に、日頃見ている暴力的行為を含むコンテンツの代わりにセサミストリートなど非暴力的な教育用テレビ番組を視聴するように指示しました。
その結果、半年後には子供は問題行動が少なくなり、 社会的能力が上がったことがわかりました。(Christakis et al 2013)。
ですが、ここで重要となるのが、この研究が3歳から5歳のお子さんを対象に行われたということです。
つまり、3歳以降のお子さんには、正しい見せ方をすれば、教育用テレビ番組や知育DVDによる効果は期待できるということです。
逆に0~2歳は基本的にどんなに良い品質であっても、知育DVDの効果はあまり期待できないということなんですね。
米国小児科学会ではどう推奨している?
ちなみに、アメリカ小児科学会では、乳幼児へのテレビや知育DVDの見せ方について、次の3つのポイントを推奨しています。
◯18か月(2歳半)未満の子供は、ビデオチャット以外のメディアの使用を避けること。
※ビデオチャットなど、双方向でコミュニケーションを取れるものはOK!
◯18〜24か月(1歳半~2歳)の子供を持つ親は、メディアをどうしても見せたいのであれば、セサミストリートなど教育的要素を含んだ高品質な番組を選ぶことが大切です。
※このとき、暴力的コンテンツを含む内容や大人向けのコンテンツは避けるようにしましょう。
また、保護者は子供たちと一緒にそれを見て、子ども自身が見ている内容を理解できるようにサポートする必要があります。
◯2歳から5歳までの子供は、テレビをはじめ、メディアの使用を1日1時間に制限すること、そして、教育的要素を含む高品質な番組を選ぶようにしましょう。
また、保護者は、テレビを子供と一緒に見て、子ども自身が見ているものを理解できるようにサポートする必要があります。
さらに、テレビで見た内容を現実世界に当てはめて、子どもの理解を促すことも大切です。
【参考】
American Academy of Pediatrics Announces New Recommendations for Children’s Media Use
このように、基本的に0歳~2歳のお子さんに関しては、知育DVDは教育用テレビ番組を見せて効果は期待できません。
赤ちゃんには知育DVDや教育用テレビ番組を見せるよりも、お母さんが話しかけたり、スキンシップを取ったりするほうが、子どもの発達を踏まえても断然良いです。
ただ、本当はそうしたくてもできないときってありますよね。
僕もシッターの経験があるので、日々、お仕事や家事があって、どうしても子どもに関わることができない時間帯があることは重々承知しています。
また、普段は暴れん坊の子どもにテレビやタブレットを渡すと、急に静かになってお母さんがほっと一息つけることもわかっています。
ただ、子どものためと思って、知育DVDをたくさん見せて、その結果、子どもに逆によくない影響を与えてしまうことは僕としては避けてほしいです。
そのため、どうしてもほかのことで手が離せないときやその他の事情があるときは仕方ありませんが、知育のひとつとして、DVD教材や教育用テレビ番組に晒したり、それだけに頼ることはやめるようにしましょう。
さいごに
ということで、今回は、乳幼児向けの知育DVDの学習効果や子どもへの影響について、海外の研究を踏まえて解説していきました。
幼児教育や知育を現在おこなっている方、これからやろうと思っている方は、ぜひ今回解説したことを参考にしていただけますと幸いです。
ジョン・メディナ(2020)『100万人が信頼した脳科学者の 絶対に賢い子になる子育てバイブル』(栗木さつき訳)ダイヤモンド社 pp.202-203
American Academy of Pediatrics Announces New Recommendations for Children’s Media Use