子どもは1歳を迎えると、ハイハイから歩けるようになり、それに伴って行動範囲も広くなります。
また、手先も少しずつ器用に使えるようになってくるため、積極的に積木やおもちゃなどを使わせて、遊ばせることが大切になっていきます。
また、頭の良し悪しを決める前頭前野が成長する時期でもあります。
つまり、この時期にお母さんやお父さんが適切な関わり方をしてあげることで、お子さんにより良い発達をもたらすことができるのです。
そこで今回は、1歳の子どもに効果的な幼児教育や具体的な関わり方について、わかりやすく解説していきます。
目次
1歳児の幼児教育の主な方針
1歳は、はいはいから歩けるようになる時期ですので、まずは2本足でしっかりと立って、歩けるようにすることに重点をおいて、トレーニングしましょう。
また、この時期は、前頭前野(※)が成長する貴重な時期でもあります。
前頭前野は、すべての行動を決定する、いわば「脳の司令塔」のようなものです。
前頭前野は、足を一歩踏み出すだけで、その強さや方向などを決定し、筋肉へと情報を伝達するために働きます。
また、歩きながら何かを見たり、聞いたり、触ったりすることで、前頭極(10野)も刺激でき、脳の発達に大きな影響を与えます。
さらに、歩くことによって背筋を伸ばした姿勢を安定して、長時間保つことができるようになると、座った時の姿勢も安定して、両手を使った作業もできるようになります。
加えて、この時期から、手や道具を使って遊ぶ習慣をつけることで、自分が作りたいものを作ったり、手順を考えて何かに取り組むことを覚えるようになります。
そのため、この時期はお散歩に積極的に連れて行ったり、積み木や折り紙などの道具を使って積極的に手を動かすように促すのが大切です。
ちなみに、年齢別の脳の発達に関しては以下の記事で解説しているため、気になる方はこちらの記事もあわせてチェックしてみてくださいね!
具体的にどんなことをしてあげたらいい?
最初にもお伝えしたように、1歳の子どもは4足歩行から直立2足歩行へと移行する時期であるため、移動範囲が広がったり、視界が大きく変わる時期になります。
また、何かを決定する時に働く「前頭前野」が成長する時期でもあるため、さまざまな関わり合いの中で刺激を与えてあげることが大切です。
そのため、この時期の子どもには普段の関わり合いのなかで、次のような工夫をしてあげましょう。
①正しい歩き方のトレーニング
②お散歩(準備・目的地の設定、信号、地図)
③ブランコや滑り台の遊具遊び
④感覚による感覚刺激
⑤新聞紙遊び
⑥おままごと
⑦折り紙
⑧神経衰弱
⑨かくれんぼ
⑩にらめっこ
⑪くらべっこゲーム
⑫数かぞえゲーム
では、①~⑫について、それぞれのポイントややり方を少し詳しく見ていきましょう。
①正しい歩き方のトレーニング
まず最初にすべきは、正しい歩き方のトレーニングです。
1歳は、四足歩行から直立二足歩行への移行時期です。
そのため、この時期から正しいフォームを身につけさせるようにしましょう。
正しい歩き方とは、かかとから着地して、足の裏をしっかりと地面につけて、地面を蹴り上げる時に、拇指球(ぼしきゅう)でしっかりと地面を踏みつけるフォームです。
歩き始めの赤ちゃんの足の裏は扁平(へんぺい)で、土踏まずがないため、よちよち歩きになってしまいます。
そのため、変な癖がつかないように、この時期から正しいフォームで歩くトレーニングを繰り返していきましょう。
また、このとき、目線は前みること、踏み出す足とは反対の腕を振ることなども一緒に教えてあげるようにしましょう。
きちんとした歩き方ができれば、自然と姿勢がよくなって、座るときの姿勢も安定します。
すると結果的に、集中力も持続しやすくなります。
ですので、お子さんが歩き始めたら、早いうちから正しいフォームを教えるようにしましょう。
②お散歩(準備・目的地の設定、信号、地図)
子どもが歩けるようになったら、お散歩にも積極的に連れていくようにしましょう。
お散歩を子どもとするときのポイントはいくつかあるため、一つひとつ丁寧にご紹介していきます。
まず、お散歩に行くときは、「今からお散歩に行きますよ」「公園に行こう」というふうに必ず子どもの顔を見ながら声かけをしてあげましょう。
このとき、子どもが乗り気ではなかったら、強制するのではなく、「お母さんは行きたいな」と自分の気持ちを伝えたり、公園でできる楽しい遊びを説明したりして、子どもの反応を見るようにしましょう。
そして、なるべく、子どもを”行く気持ち”にさせてから出発するようにしましょう。
お散歩に出かける準備ができたら、次は目的地をを決めましょう。
目的地に関しては、基本的に子どもが楽しく遊べる公園などがおすすめです。
出発する前に、二人で目的地を話し合ったら、次の点を注意して歩くようにしましょう。
1.正しいフォームでなるべく歩かせる
2.車道側を歩くなどして、赤ちゃんの安全を確保する
3.お互いに歩調を合わせつつも、赤ちゃんに一歩前を歩かせる
4.歩きやすい服装にする
5.周囲に注意を払いながら歩く
赤ちゃんが疲れてしんまったら、おんぶや抱っこ、ベビーカーなどを使って、目的地まで連れていくようにしましょう。
そして、目的地に着いたら、「よくがんばったね」とほめてあげるのも忘れないようにしましょう。
また、散歩を通して、信号の色やルール、色の言い方なども教えてあげるようにしましょう。
もし余裕があるのであれば、お母さんが子どもに声をかけながら、木やお花屋さん、お家など周囲にあるものに注意を向けさせてあげましょう。
そうすることで、一時的に情報を記憶するワーキングメモリーのトレーニングにもなります。
また、公園では、地面に線を引いてあげて、まっすぐ歩いたり、まるく歩いたりする練習をするのもおすすめです。
このときも、最初にお伝えした正しいフォームが崩れないように声をかけながら練習するようにしましょう。
他にも、階段があったら、お母さんが手をつないであげながら登らせたりして、さまざまな刺激を与えてあげるのもポイントです。
③ブランコや滑り台の遊具遊び
公園では、ブランコや滑り台で積極的に遊ばせてあげるのもおすすめです。
というのも、ブランコや滑り台は、「迷路反射(※)」を鍛えるのに最適な遊具だからです。
※「迷路反射」の「迷路」とは耳の奥にある三半規管や耳石器の別称のことで、頭が上下左右へ動いた時に起こる反射のことを「迷路反射」と言います。
この迷路反射を鍛えることで、正しく歩けるようになったり、転びにくくなったりします。
ただ、ブランコや滑り台は危険が伴うので、必ずお母さんがそばについて、必要に応じて補助してあげることが必要です。
ブランコであれば、お母さんが膝の上に子どものを乗せて、恐がらない程度にブランコをゆっくりこぎはじめましょう。
そして、ブランコに慣れてきたら、次は滑り台へいきましょう。
小さい滑り台であれば、お母さんが横に立ちながら、お子さんを滑らせてあげましょう。
大きい滑り台しかなければ、一緒に階段に登って、膝の上にのせてすべってあげましょう。
④感覚による感覚刺激
お散歩に出かけたり、公園に行ったときは、お母さんが声かけをして、子どもの注意をいろいろな物に向けさせてあげましょう。
そうすることで、お子さんの視覚や聴覚、触覚などの感覚を刺激できるとともに、言語力を高めることができます。
そのため、お散歩や公園に出かけたときは、対象物を指差して、お子さんの注意をそちらに向けさせた後に、正しい言葉で名前を教えたり、どんなものなのか説明してあげましょう。
例えば、その公園にチューリップがあれば、それを指差しながら、「これはチューリップだよ。赤色のチューリップもあれば、黄色のチューリップもあるね。」というふうに教えてあげたり、触らせてあげたりしましょう。
この時期の子どもは、まだお母さんが言った言葉を正しく発音できないことが多いですが、それでも脳にはきちんと物の名前が蓄積されています。
そのため、お散歩に出かけたら、さまざまなものに注意を向けさせるようにしましょう。
⑤新聞紙遊び
1歳になったら、手先のトレーニングもかねて、新聞紙を与えあげましょう。
まず、新聞紙を1枚渡して、どういうものなのかじっくりと触らせてあげましょう。
そして、子どもが好きに触ってある程度時間が経ったら、お手本として、赤ちゃんの前でお母さんが新聞紙を破ったり、ぐちゃぐちゃにしたり、丸めたりしてあげましょう。
このような遊びを通して、脳の運動野というところを刺激したり、手先の動きを養うことができます。
また、慣れてきたら、破き方や破る方向を指定したり、細く長く破らせたり、破った新聞紙同士をテープなどでくっつけたり、リング状にしてつなげたりなど、ちょっとした工夫を取り入れるのもおすすめです。
⑥おままごと
子どもが1歳になったら、親子でおままごとをしてみましょう。
おままごとは、遊びの中で生活のルールを教えることができます。
例えば、お皿や食べ物を渡すときに、「どうぞ」と言って出し、「いただきます」と言って食べるなどを、お母さんが子どもと丁寧に会話しながら行うことで、マナーや気遣いを学ぶことができます。
そのため、実際に使う食器(プラスチックなど破れる心配の少ない素材)や専用のおもちゃセットを使って、積極的におままごとをするようにしましょう。
また、慣れてきたら、食べ物を粘土や紙で作ってみると、手先の器用さを鍛えるとともに、想像力なども養うことができます。
それもできるようになったら、本物の食材を使って、簡単なサンドイッチやおにぎりを一緒に作ってみるのもおすすめです
⑦折り紙
1歳になったら、折り紙で遊ばせるのもおすすめです。
そのなかでも、まずは遊び道具として興味を引きやすい「紙ヒコーキ」を一緒に作って遊びましょう。
ただ、折り紙は、紙を使った遊びのなかでも最も高度なメソッドだと言われています。
そのため、最初はお母さんが子どもの目の前で折り紙を折って立体の造形物ができあがること、そして、紙ヒコーキを飛ばして、その遊び方を教えてあげましょう。
そうすると、最初は赤ちゃんは紙ヒコーキを飛ばすことに夢中になると思いますが、徐々に作るほうにも興味をもってくることが多いです。
そうなったら、一緒に折ってあげましょう。
また、飛ばすときも、どうしたら遠くまで飛ぶか教えてあげたり、飛距離を競争したりすると、いろいろな刺激を与えることができます。
⑧神経衰弱
ここまでご紹介してきたトレーニングや遊びができるようになったら、絵カードを使った神経衰弱をやらせてあげましょう。
神経衰弱は基本的にトランプを使いますが、最初のうちは難しいと思うので、果物や動物などの絵が大きく描いてあるカードを使うことをおすすめします。
神経衰弱では、カードの絵とそれが置いてある場所を一時的に覚える必要があるため、ワーキングメモリのトレーニングになります。
そのため、ぜひ普段の遊びに加えてあげるようにしましょう。
カードの枚数は、最初は4枚〜はじめることをおすすめします。
そして、慣れてきたら、少しずつ枚数を増やしていきましょう。
⑨かくれんぼ
この時期の子どもには、「かくれんぼ」もおすすめです。
かくれんぼと聞くと、公園でする遊びのイメージを持っている方が多いと思いますが、まずはご自宅のなかでやってあげればOKです。
かくれんぼは、「いない・いない・ばあ」を応用した遊びでもあるため、予測力とワーキングメモリを鍛えることができるとされています。
そのため、先ほどご紹介した神経衰弱と一緒に、普段の遊びの中に取り入れることをおすすめします。
⑩にらめっこ
赤ちゃんは、人の表情から、いろいろな情報を読み取ることができるようになっています。
ですが、まだまだ表情の数は少ないので、さまざまな表情を教えてあげる必要があります。
そこで、おすすめなのが「にらめっこ」です。
にらめっこを通して、子どもが笑いそうな顔を見せてあげることで、その子は意外性を学びます。
また、「笑うと負け」というルールを教えることで、笑わないように我慢することも覚えていきます。
そのため、普段親子でする遊びの一つとして取り入れてみてくださいね!
⑪くらべっこゲーム
この時期の子どもには、少しずつ「量的な概念」を教えていくことも大切です。
「量的な概念」とは、物の大小や長短、重軽などのことです。
この概念を楽しく教えるのにおすすめなのが「くらべっこ」ゲームです。
例えば、くだものや野菜、いつも遊んでいるおもちゃなどを並べて、どっちが大きいかなどを質問して、指をささせてみましょう。
最初はなかなか難しいですが、楽しく繰り返していくことで、徐々に意味がわかるようになってきます。
また、比べるものを子ども自身に選ばせてあげるのもポイントです。
「量的な概念」は、日常生活でも勉強でも必要になってくるため、早いうちから教えてあげることをおすすめします。
⑫数かぞえゲーム
この時期になったら、数を数えるトレーニングもはじめましょう。
「みかんはいくつありますか?」「積み木を3つ持ってきて」など、日常生活のなかで、数を数える機会はたくさんあります。
そのため、チャンスがあれば、数を数える癖をつけさせるようにしましょう。
また、お風呂に一緒に入ったら、出るときに必ず「10」数える習慣をつけましょう。
「10」数えるときは、最初は「1、2、3」というふうに普通にカウントしていきましょう。
それができるようになったら、次は「10、9、8」という感じで逆から数えて、最後の「0」まで教えるようにしましょう。
このように、普段の生活のなかで数を数える習慣をつけることで、数字の学びも早くなります。
さいごに
今回は、1歳の子どもに効果的な幼児教育や具体的な関わり方について解説してきました。
1歳は、歩けるようになったり、徐々に手先が上手に使えるようになったりする時期です。
そのため、お子さんの発達に合わせて、さまざまな遊びやトレーニングをしましょう。
また、脳の良し悪しを決める前頭前野が成長し始めるタイミングでもあるため、正しい歩き方を教えるとともに、お散歩や公園などにも積極的に連れて行ってあげるようにしてくださいね!